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戦後シンアス貧乏物語【世界の果てで待つもの】01
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2009/06/08[ Mon ] 21:08
「何ですかこれはーーーッ!」


シンの絶叫が、広大な大地に響き渡った。






突然告げられた、脱走命令。

シンがこれから向かうのは、永遠に出られない牢獄の中ではなくて。この広い宇宙空間で何処に居るかも判らない、お尋ね者となったアスランが身を潜めている場所。
もう一生会えないだろうと思っていた人、アスランが待つ何処か。シンが向かうのは彼の元。
考えてもみなかった結果に、しかもいきなり言われたのでは混乱しない訳がない。しかし、それをシンの頭が理解するより先に、キラはさっさと行動に移してしまった。
「ちょっ、ちょっと待って下さいよ!今からですか!」
「そうだよ?君が言ったんだからね。アスランの所に行きたいって」
「言ってません!」
「嫌いじゃない、ってさっき言ったじゃない」
「そ、そうですけど、でもっ!」
それはアスランの事を嫌いじゃないと言っただけで、アスランの所に行きたいと言った訳じゃない。
いや、会いたいけれど、でもまだ心の準備ってものが!
状況が飲み込めずすっかり錯乱してしまったシンは、牢の向こう側のキラに食ってかかった。
脱走命令を下された時点で、アスランとの会話は強制終了されている。待ってるぞ、と暢気な言葉をアスランは言っていたような気がするが、それどころじゃないシンの頭は一切覚えていない。
鉄格子を握り締め、ギャンギャンとかつての宿敵に向かって吠えまくる。しかしキラはシンが何かを言う度にいちいち反論し、何の躊躇いもなく牢の扉を開けた。
「アンタ本気ですか!」
キラの行動に仰天したシンが叫ぶ。
今やラクスの片腕としてザフトに加わり、其れなりの権力を持ったキラが、シンの脱走に加担するのは大変な事だ。しかもそれがバレたらかなりヤバいに決まっている。
キラの事は今も嫌いだけれど、それでもやっぱりこの状況は、幾らシンだって慌てる。
「シン君?」
けれど、シンの心配をよそに、キラは笑みを湛えたまま牢獄に入り、近寄ってきた。ついでに従者の兵士も。
「時間がないって、何回も言わせないでよ?」
ゾッとした。顔は笑ってるのに、目が笑ってない。
にっこり笑顔で顔を近付けてるのが、却って怖いんですけど!
この人本気だ、と本能的に恐怖を感じた。思わずキラに怯えたのをチャンスと判断したのか、シンは一瞬の隙をつかれて。
「ング!」
一緒に入ってきた兵士が背後に回り、シンを羽交い締めにする。そして隠し持っていた布切れで口を覆い、シンは何か薬品を嗅がされた。
「ンー!ンー!」
「安心して。只のクロロホルムだから」
「ンー……ッ」
只のって、そんな問題じゃない。というか随分物騒じゃないか。これじゃまるで脱走というより……。
幾らでも文句は出てくるけれど、意識はあっという間に遠くなっていく。朦朧となる中で、キラがこれまた最高の笑顔でシンに話し掛けて。

「ちょっとだけ効き目強くしてあるから、アスランの所に着くまで目覚めないと思うけど」

と、とんでもない事を宣告された。


何も反論出来ないまま、シンはキラの目論見通りに直ぐ様気絶した。






そうしてシンはキラの手助け?でザフトを脱走し、アスランが待つ何処かに連れていかれる事となった。
目が覚めた時には既に其所に目的地に到着しており、どういった経路で牢屋から出られたのか、いつの間にシャトルに乗せられたのか、全く覚えていない。
「着いたぞ、降りろ」
シャトルに同乗していたらしい人に叩き起こされる。同乗者はシンの知らない人で、キラは当然シャトルには乗っていなかった。
あのフリーダム野郎!人をいきなり気絶させて、拉致まがいの脱走をさせやがって!そんで自分はやっぱりついてこないのかよ!と。とんでもないやり方に段々と腹立たしくなってくる。
「ボケッとしてないで、さっさと降りろ!」
まだ半分呆けながら、此所には居ないキラに立腹していると、顔も知らない同乗者に座席からつまみ出された。
「其所で大人しく待っていろ」
「え、でも……」
「その内直ぐに迎えに来る」
理解出来ないままシャトルから叩き出され、よく判らない場所に無理矢理降ろされた。そして其所で待っていろと言い残し、非情にもシャトルは直ぐに飛び去ってしまったのだ。

「ちょっと……」

一人取り残されたシンの目の前には。

「……ここ、何処?」

地平線の向こうまで、見渡す限り何もない広大な荒れ地。

「何ですか此所はーーーッ!」

何処までも広がる荒れた大地にシンが絶叫して。


そうして話は冒頭に戻る訳だが。




アスランさん。

俺はアンタに会いたかった。
会って変わりたかった。始めからやり直したかった。
アンタと一緒なら、変われるって思ってた。

でもアンタは居なくなって。俺も軍に捕まって。
もう……会えなくなって。

だから、諦めた。
どうでもいいって、全部諦めた。アンタに会えないなら、何にも変わらないって。
諦めたんだ、俺は。

でも、さ。
諦めてたのに、会えるかもしれないって。アンタにまた会えるって。一緒に暮らさないかって。
そりゃちょっとは期待するでしょう。アンタに会えるのをずっと夢見てたんだから。アンタに言いたいこと、あったんだから……。

けど、でも!

何だよコレは!


「アンタって人はぁーーーっ!」


全然状況が飲み込めなくて、全然知らない土地に一人置いてきぼりで。しかも此処は何処までも果てしなく荒れ地で。

全部、全部、アスランさん、アンタに会うってだけで!

何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんですか!


と、シンがこれまでの怒りを全部アスランになすりつけて、だだっ広い空に向かって吠えた時だった。




「シン、ようこそ」


と、アスランがいきなり現れた。




荒れ果てた地面、シンの足元。




アスランが、ひょっこりと顔を出していた。
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