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管理人ひさこによるガンダムSEED DESTINY及び蒼穹のファフナーのファンサイトブログです。オフィシャル等とは一切関連はございません。
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【柩】2 -碧の空-
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2007/07/21[ Sat ] 22:28
「気付け、シン!」

彼が、叫んだ。

「戦争を終わらせる為に戦う、それは新たな争いをしているに過ぎない。本当に戦争を終わらせたいなら出来る事はひとつ、武器を持たない事だ!」

今更そんな正論を云ってほしくなかった。もう既に手にしているのに。銃を、剣を、………操縦悍を。

もう、沢山人を、殺してしまったのに。


そして、彼は沈む。赤い閃光と共に爆発に飲まれ、黒い水しぶきを上げて、夜の海に。
シンに撃たれて、アスランは沈む。
シンの心に言葉の弾を撃ち、記憶の刄を刺し、アスランはどす黒い暗闇の海底へと、沈む。



あんなに碧かった海は、赤く血に染まって見えた。







「…此所に居たんですか」
探していた人物を漸く見つけ、シンは彼の人に意を決して声を掛けた。
正直まだ戸惑いはある。どう接していいのか、それよりも彼に会っていいのかすら、混乱から抜け出せないでいるシンには全く判らない。
でも彼を探して、そうして話をしたかった。
だからシンは今此所に来た。慣れぬ艦内を迷い歩き、やっと辿り着いた、アスランが居る格納庫まで。
「ああ、シンか」
声を掛けられたアスランはそれまで見上げていた物から眼を反らし、シンがよく知る辛そうな微笑みを浮かべながら振り返った。
アスランが見ていた物は、つい先程まで操縦席に乗り込み、暗い宇宙の海を自在に游いだ機体である。先の大戦で戦い抜いた自機を更に強化した、今のアスランの機体。
一時停戦を迎え束の間の時間を休息に当てがわずに、彼は大切な機体の破損状況を手元の整備ログと照らし合わせながら目視で確かめていたらしい。誰よりも慎重で機体整備を重視する彼らしい行動だと思った。
「治療は済んだのか?」
「………はい」
格納庫の入り口に立ち止まったままのシンへと歩み寄り、月面墜落時に負った怪我の事を気遣ってくれて。
そう遠くはない過去、同じ戦艦に所属し共に戦ってきた。アスランにとってはえらく手のかかる部下だった。けれど信念の違いや様々な思惑に囚われた為に、刄を交える敵となってしまった。
なのに彼は今でも変わらずに接してくれて。
「どうだ、怪我は痛むか?」
「…いえ、皮膚を切っただけなんで」
「そうか。だが墜落の衝撃で打撲もあるだろう。余り無理はするなよ?」
「………はい」
アスランが気遣うシンの怪我は、彼が負わせた傷でもある。最期と決めた総力戦、持てるだけの力を出して戦い抜いた戦争。その最中で偶然か故意か、シンはアスランと直接対峙し、そうして彼に敗れた。

振るうべき力を見極めろ、力の意味を知り尽せ。

激しさを増す戦闘中にもアスランはシンに叫び続けていた。
そういえば昔にも彼に云われた、ある言葉があったのを不意に思い出す。

シン、俺達の機体は、俺達の亡骸を納める柩なんだ。
結局あの時、シンは静かに語るアスランの言葉に何も言えずに。アスランも又笑う訳でもなく怒る訳でもなく、ただ静かにシンを翠の眼に映し。
沈黙のまま甲板から彼が立ち去っていくのを呆然と見ているだけだった。

けれど今は違う。

シンが亡骸となって柩に入る代わりに、アスランを亡骸にして柩に納めようとしたのだから。

間違いなくシンにしか聞けないだろう、答え。それを聞く権利も、覚悟も、今のシンには確かにあった。

皮肉にも過ちを犯して漸くシンは、彼の人の言葉を理解したのだった。真理を得るには余りにも辛過ぎる代償ではあったけれど。

「………前に、アンタ云いましたよね?」
「ん?」
突然の問掛けにアスランがさも不思議そうな顔でシンを見返している。何と無く、怖くなって、でも。
「あれ、を………柩、だって」
と、シンは怯まずに言い切った。側に在る巨大な赤い悪魔を指差して、柩、と尋ねたのだ。暫し指先の向こうを見上げ、やがてアスランが、ああ、と頷いた。
「云ったな、そういえば。しかし何故今頃…?」
「俺、何故かそれがずっと引っ掛かってて………」
「そうか」
アスランからすれば突然過ぎる質問だ。だが振り向いた先に酷く困惑した表情のシンを見て、短く答えただけだった。

「棺になり損ねたけどな」
苦笑しながらアスランが云うと、シンが傷付いたように彼を睨む。
「………んな言い方、止めて下さい」
「………………すまない」
口下手なアスランにはやはり冗談は巧く言えない。お陰でシンが今も負ったままの疵をえぐる結果となり、少年が一瞬絶句したのに気付いてやっと彼を傷付けてしまったと悟った。
うつ向きがちに拳を握る少年が、痛々しくて、可哀想で、………憎たらしいのに、可愛くて。

やっとか、とアスランは感慨に浸る。

「だが…ならずに済んで良かったよ」
「え…?」

ぽん、と不意にアスランがシンの頭を軽く叩いて。顔を上げろ、という仕草に見上げれば。

「本当に良かった」

そう云って、アスランは笑う。いつもの困った顔じゃなく、本当の笑顔で、シンに笑う。

にこやかな、心からの笑顔を浮かべて尚アスランは淡々と語る。


「あれは棺だよ」

棺に入らないで、良かった。

「棺、になる筈だった」

死ななくて、良かった。

「今はならずに済んで良かったと心から思う」

今、生きていて、良かった。

「お前が、此処に居るからな」

アスランの隣に、居るから。


シンもアスランも、生きて今此所に居る。

だから、本当に良かった。

翠の眼が、告げていた。その言葉の意味を考え、直ぐに悟る。
彼は判っていてくれた。あの時彼が発言した言葉がシンを捕え悩ませていた事を。よく知る人物を討たねばならなかった葛藤、生き続ける限り戦わねばならない苦悩。
そして、柩、という言葉に秘められたアスランの想いに漸くシンが気付いた事も、その為に今シンが後悔している事にも。
アスランは理解してくれていて、だから笑ってくれたのだ。

もういいよ、お前はちゃんと判ってくれたから、と。



「ア、ス、ラン…ッ!」

急に目頭が熱くなり、気付けばシンは号泣していた。
みっともないと思う、こんな無様な姿を彼に晒して。

でも泪が止まらない。

泣きたくて泣きたくて、今はそうするしか。

「シン、泣くんじゃない」
「だっ、て…でも…!」
「判ってる。大丈夫だから、シン…大丈夫だ」

何が、だって、なのか。
何が、だから、なのか。
互いの言葉の意味は、互いにしか判らない。

けれど、そう。
もう、大丈夫。

彼は、確かに生きていて。シンの前に居てくれて。
そうして笑ってくれて。

その顔は逝く者の顔ではなかった。希望に満ちた、生きる者の顔をしていた。
シンと共に、生きのびた人達と共に、この世界を生きる、と。

そう心に誓った顔をしていた。



シン、俺達の機体は、俺達の亡骸を納める柩なんだ。

いつか見た蒼い空と碧い海。
いつか見た黒い空と赤い海。

そしていつか見た、そう告げた時の哀しげな彼の姿。

ずっと囚われてきたものからやっと今昇華されたような気がして。

過去を背負う苦しみ、現在を償う辛さ、そして未来を生きる喜び。

それらをひしひしと感じて。



シンはただ泣いていた。
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