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管理人ひさこによるガンダムSEED DESTINY及び蒼穹のファフナーのファンサイトブログです。オフィシャル等とは一切関連はございません。
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月ひとしずく 12 ( #43~45)
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2006/11/23[ Thu ] 22:36

「何から話せばいいだろうな…」


ぽつり、と呟いた言葉に何故か周囲の空気が更に張りつめる。何気無い言い回しなのに、その言葉の裏に隠された真実の重さが伝わってくるようだった。

ラクスやカガリを始めとしたAAの主だった面々、そしてキラ。彼等が一斉に見つめる中でアスランは言葉少なに語り始めた。
その顔には思いつめたような悲壮感はなく、何処か遠くを見つめているようで。ブリッジに集った皆に囲まれ、傷付いた躯をシートに腰掛けさせて。
漸く全てを語れる時が来たのだと、アスランはそう実感していた。


「きっかけはあの日…キラとカガリに会った事でした」
「アスラン…」

岩に囲まれた海岸で人目を忍んで再会した、あの日。
互いに真意を知りたくて、各々が相手を止めようとして、けれど決裂したあの日。

アスランの隣に立っていたカガリが悲しげな表情で彼を見る。その視線に気付いて、違う、責めている訳じゃないよ、とアスランはカガリに困ったような笑みをしてみせるとその先を語り出した。
「その時俺は初めてラクスの暗殺未遂事件を知ったんです。…ご存知の通り、俺はもうオーブには居なかったですから…」

そう、ザフトに復隊していたから。
彼等を一度は捨てて去った立場を今明確にせねばならないのが心苦しい。
だからはっきりと口にするのは避けて言葉を濁すアスランの心情を皆は複雑な思いで、それでも理解して受け止めてくれたようだった。誰一人今この場で蒸し返して追求する者はおらず、アスランが語る言葉を黙って聞いている。
「ミネルバに戻った俺はキラから聞かされた事が信じられずにいて…なら自分で確かめてみよう、と探り始めたのです」
それまでややうつむきがちに話していたアスランが顔を上げ、鋭い眼差しで周囲を見つめる。

全てはあの日知った事がきっかけだったのだと。


そして、それが彼にとって波乱の始まりでもあった、と。

鋭い眸の奥に僅かな悲壮を湛えていて。



ミネルバに戻り直ぐにアスランはフェイスという己に与えられた特権を利用して極秘裏に調査をしたのだという。
だがプラントではなくミネルバという限られた空間ではその手段も多くはなく、先ずは自室に備えつけられているノートパソコンからザフトの中枢である諜報部のデータに侵入した。無論表向きに公開されている情報には暗殺計画などある筈もない。
そんな事は始めから判りきっていたから、アスランは敢えて外堀を埋めるようにラクスには関係のないような事柄から調べたのだという。
「ラクスを暗殺するとなれば誰かが彼女を不必要だと判断したという事になります。ならばラクスが障害物となりうる案件や計画がないか探す事から始めました」
アスランの判断は確かに間違ってはいなかった。
誰が黒幕であれ、隠れ住むラクスの居場所を突き止め、そして秘密裏に消そうとしたのだから、今後ラクスが邪魔をしそうな何かがある、と踏んだのだった。
「私はそんなに暴れるような印象があるのでしょうか」
「ラクス…それはちょっと論点がずれてるから」
アスランの予測をそれまで黙って聞いていたラクスが、張りつめた空気を壊すようなのんびりした口調でぼやいた。片手を頬にあて、困ったように首を傾げて呟く彼女に、隣にいたキラが苦笑しながら制した。
変な所で天然なラクスの一面に中断したが、直ぐにアスランは続きを語り出す。
「ザフトには沢山の計画や開発が今も繰り広げられています。ザフトが軍隊である以上それは当然でしょうし、幾ら俺でも簡単には知り得ない事や口外出来ない物も数多くあります」
だがそれはザフトに限られた話ではない。軍隊であれば何処も同じである。
中立を保つオーブですら極秘に数々のMSを開発してきたのだ。人の思惑が絡み合えばそれは余計複雑になっていく。
アスランに幾ら特権が与えられていても知る事が出来る情報は限られている。多少危ない方法で探ってみても、それには変わりなかった。
「しかし…調べていく内にある事に気付いたのです」一瞬だけ言いよどんだアスランの言葉に皆息を飲む。

「Dプラン」

と、だけ。アスランは口にした。

と同時にラクスを始めとした宇宙に上がり諜報活動をしていた者達が目を見張る。
「データの所々にその言葉がありました。最初は見過ごしていたのですが、しかしそんなプランは聞いた事もないし勿論何かの作戦名でもない」
では何か?。そう感じた疑問が導いてくれた。
気まぐれに過ぎないような疑念でその言葉を検索すれば、示された答えにはある人物の名前があった。


ギルバート・デュランダル。
現在のプラントを導く保守的な指導者。

クライン派の流れをくんだ反戦主義者として支持を得ていた現議長の名前。
かつて彼は一人の科学者としてあるラボに所属していたという。それは議長に選出される前から皆に知られている肩書きでもあった。専門は遺伝子工学。遺伝子操作の果てに産み出されたコーディネーターの、自然に逆らった代償として欠けてしまった種族繁栄の問題を解決すべく様々な研究を行ってきた人。
その彼が関わるプランの名前が何故か軍部のデータバンクに記されている。本来ならばザフトでは有り得ない、寧ろ彼が所属するプラント評議会側にあっても良い事柄である。
確かにザフトは評議会の指揮下にあるが、しかし軍隊として独立した一面もある。
だがこのプランは評議会ではなくザフト側で記録として残されていて。
プラント評議会の最高責任者であると同時にザフトの最高責任者でもあるデュランダル議長の関わるプランが、ザフトにだけ記録されている事実に気付いた時、アスランの中で何かが警告音を発した。

キケン、キケンだ、と。

「まだその時にはDプランが一体どんな物なのかも判りませんでした。しかし何かが気にかかる…」
「それでDプランについて調べ始めた、というのですね?」
「はい、ラクス」

先程のようなぽやんとした彼女ではなく、凛とした表情で尋ねるラクスに、アスランもまた目を反らさずしっかりと頷いていた。


Dプラン。

全ては、それから始まったのだ、と。

Category [ 時系列(No.08)【月ひとしずく】 ]
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