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管理人ひさこによるガンダムSEED DESTINY及び蒼穹のファフナーのファンサイトブログです。オフィシャル等とは一切関連はございません。
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千の夜とひとつの朝 12 (#40~42)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/12/10[ Sat ] 23:21
アスランは痛む身体を気にもせず、ただただ前へと歩き続けた。
メイリンに支えられ、漸く辿り着いた格納庫は、先程のアンノウンMSが突然収容された所為で騒然としていた。
周囲の整備クルー達はそれに驚くのに精一杯で、重体だったアスランが格納庫を訪れた事に気遣う余裕がない。
それも当然の事だろう。

今は『存在していない』筈のMSが、目の前に確かに『在る』のだから。

誰よりもよく知るアスランですら動揺しているのだ。
「あれ、は…?」
アスランを支えるメイリンが知らない筈の機体を見つめ呟いた。
あの真紅のボディカラーは、データ上で見たあのシルエットは。

かつてアスランが先の大戦でジェネシスを破壊する為に自ら爆発させた機体『ジャスティス』ではないのか?。

しかしアスランはそれよりも、今コクピットから出てきた一人の人間から視線を外せなかった。

「…ラクス!?」

まさか、そんな、と。
何故彼女がMSから姿を現すのか。
本来彼女は『歌姫』だ。
『戦士』ではないのに。
コクピットから地面へと降り立った彼女はヘルメットを脱ぎ、鮮やかな桃色の髪を宙に舞わせた。身に纏うパイロットスーツも彼女の髪と同色で、どう考えてもラクスの為に用意された物だろうと知る。
「アスラン」
ラクスがアスラン達に気付き、にこやかに微笑んだ。
「…え、嘘…っ。何で…ラクス様が、此処に…?」
アスランを支えながらメイリンが混乱を隠せないでいた。
当然だろう。
メイリンは議長が用意した『ミーア』を『ラクス』と信じ、今もザフト側に居ると思っていたのだから。
「あ、アスランさん…?」
「…すまない、話していなくて。詳しい事は後でするが………彼女が本当の『ラクス・クライン』だ」
縋るように見つめてくるメイリンにアスランは困りながらもそう告げて、再び近づいてくるラクスを見つめる。
「君が、これ、に乗っていたとはな…。大丈夫だったのか?」
「はい。キラに云われた通りに、本当に只『乗っていた』だけでしたから」
アスランが心配して問い掛ければラクスは更に笑みを深くして語る。

キラがあの後ラクスの元に向かったのは知っていたが、ラクスの説明によると宇宙にいたラクスにも議長は極秘裏に刺客を送り込み、襲撃を仕掛けてきたという。
カガリから借りたストライク・ルージュで何とかラクスが乗るヱターナルを守ったようだが、機体は中破したらしい。
そしてラクスがキラにあの新しい翼『ストライク・フリーダム』を再び与えたのだという。
いつのまに製造していたのだろうか。
プラント側に隠されていたデータを極秘に流用し、カスタマイズしてキラにしか扱えないであろう性能を更に高めたようだった。
そしてオーブの危機を救う為、宇宙に居たラクスをAA側と合流させる為、同時に製造していたらしいこの『ジャスティス』を使う事をキラが云い出したのだという。

「キラが…」
アスランが呟いた。
「ええ。私が乗り込むようにデータを書き替えてオートモードにして下さったのです」
「そうか」
ラクスの言葉を聞きながら目の前の機体を見上げるアスランに、今度はラクスが問い掛けた。

「アスランこそ、大丈夫、なのですか?」
「………え?」

僅かに首を傾げ尋ねるラクスにアスランは苦笑を隠せなかった。
確かに今、傷だらけの身体で、自分よりも小さく細い少女に支えられていなければ満足に歩けないのだ。
こんなみじめな姿をラクスはどう思ったのだろうか。

「大丈夫だ」
「いえ。お体の事ではありませんわ…」

ラクスの言葉にアスランは目を見開いた。

つまりそれは、どんな形であれ母国を裏切り離脱した事実、そしてそれを受け入れなければならない心情を、彼女は思いやってくれていたのだ。
「…キラから、少しお話を伺いましたの…」
「………」
少し哀しげに呟きながらもラクスは微笑みを絶やさなかった。
それがかえってアスランを苦しめる。
ザフトに戻り、偽物のミーアの存在を黙認し、AAにも刄を向けようとした。
本来ならばラクスになんと罵られてもおかしくはないのだ。
なのに彼女はアスランを静かに労る。
何も云えなくなり、アスランは視線を逸らして俯き、話を切り出した。

「………『ジャスティス』………」
「はい」
「…何故、これを再び作り出したんだ…。そして今、AAに…」

意を決したかのようにアスランが顔を上げ、目の前のラクスに鋭い視線を向ける。
キラに話を聞いていたのなら、今AAにアスランがいる事を知っていた筈だ。
そして『ジャスティス』はアスランにしか扱えない機体である事も、アスランの身体が今どんな状況にあるのかも、知っていて何故。

「………俺に、またこれに乗れ、と………?」

視線の鋭さをそのままに、アスランは自虐的に呟いた。
今度こそ『正義』だと信じたものに打ちのめされ、殺されかけた自分に、また『力』を与えようとするのか。
そして『母国』と、『同胞』と戦え、と命ずるのか。
属する側は違えど、議長のように『アスラン・ザラ』の利用価値は手駒となって『戦う』事だと、彼女まで云うのか。
アスランが苦々しく言葉を紡ぐ。

「俺は…『アスラン・ザラ』は…。結局は戦い、殺す事しかできない、何も生み出せず破壊するしか出来ない『戦士』だと、君まで…云うのか…?」

横でメイリンが驚きに声をあげていたが、アスランは彼女を気遣う余裕はなかった。

しかし、ラクスはまたも微笑う。

「………あちら、で何と云われ、どのように貴方を欲していたのか、判りませんが…」

そして、穏やかに、告げた。

「本当に?。本当に貴方は何も生み出せないと思われているのですか?」
「………ッ!」
「私は貴方がたのように戦場で直に戦う事は出来ません。しかし、その『力』を、『力』の使い方を、間違う事なく正しく振るう事が出来るならば、と思います」

淡々と優しい声音で語るラクスの言葉にアスランは言葉を失った。
それは確かに戦場に赴く事のない彼女だから云える言葉で。
壊す為の戦いを見つめてきたラクスが、今、アスランまでもそうなのか、否、違いだろう、と。
アスランは知っている筈だ。
生み出す為に戦う事の意味を、知っている筈だ、と。

「何であれ…進むべき道を、選ぶべき道を決めるのは、アスラン…貴方ですわ?」

優しく説き伏せるような言葉はアスランに衝撃を与える。
ラクスはいつも答えを突き付けない。
優しく語り、事実のみを語り、突き放し、しかし道を選び取るのを見守ってくれる存在で。

「そして、破壊よりも恐ろしいのは…道を閉ざす事」

此処で終わりだ、と先に進むのを諦め、流され消えていく事。

アスランはラクスの言葉を心の中で繰り返しながら彼女から視線を逸らし『ジャスティス』を見上げた。

不意にラクスの声音が僅かに変化する。

「傷尽き果てた貴方に今選択を迫るのは残酷過ぎるでしょう。でも…キラは」
「………………え?」

「キラは『何かをしたい、誰かを救いたいと願った時に、何一つ出来ないまま見守るだけは…きっと、アスランにとって、自分が死ぬよりも辛い事だと思う』と。そうおっしゃいました」

床を這い行こうとした時、キラが言い捨てた言葉をこの時アスランは鮮明に思い出した。

『力』を失った君に、何が出来る?と。

だが、今なら判る。
それは同じく機体を失ったキラとて同じ。
しかし彼は諦めず信念の元に再び戦場に戻った。
アスランも守りたいもの、大切な人の為に同じ選択をするだろう、と。
あの時現実を突き付けたのはアスランの身体を思っての事。
しかし目覚めた時にまたそれを望むのならもう誰にも止める権利はない。
選び、そして命尽き果てても、アスランがそれでいいと思うならば。
行け、と。キラはアスランの心情を察してラクスにそう助言してくれたのだった。

「…キラ………」
「確かに貴方は『戦士』なのかもしれません。しかし『力』の正しい意味を知る貴方は…。『戦士』である前に『アスラン』でしょう?」

ラクスは確かに今、アスランをひとりの人間として認めた上で告げた。
その言葉を聞き、アスランは視線を『ジャスティス』からラクスへ、そして己の足元へと移す。

ぎゅ、と拳を握り締めて。

今、思う事は。

先の大戦で行き先を失った自分を救ってくれたカガリと、彼女が愛する母国オーブを守りたい。
恐らく世界で唯一となった良心を守りたい。

そして。

修羅の道に置き去りにしてしまった、あの少年を。

今でもどうしょうもなくひかれている、シンを。

かつて彼が絶望の末に捨てた母国を自らの手で破壊し、心の闇を広げさせない為に。

本当は誰より優しいシンの心を守りたいから。



やがて沈黙していたアスランが、ゆっくりと顔を上げた。
そこには先程までの苦痛に満ちた表情はなくて。

ふ、と微笑って。

「…ラクス。頼みが、ある」
「はい」

聞かなくとも表情で判ったがラクスは頷いた。



「俺に『ジャスティス』を託してくれ」

迷う事なく、アスランは、告げた。
Category [ 時系列(No.06)【千の夜とひとつの朝】 ]
Thread Title[ 機動戦士ガンダムSEEDDESTINY ]   Thread Theme [ アニメ・コミック ]
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