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管理人ひさこによるガンダムSEED DESTINY及び蒼穹のファフナーのファンサイトブログです。オフィシャル等とは一切関連はございません。
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侵食 8 (#38~39)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/11/08[ Tue ] 21:47
何処までも果てしない、赤い赤い水面。
血を思い起こさせるその世界に、たった独り。

アスランは血に塗れてそこに存在していた。

空は闇。一筋の光すらない、漆黒と赤だけの世界に、不意に何かが聞こえる。

それは呼び声。

アスランを呼ぶ声。

一人のような、大勢のような、アスランを呼ぶその声は始めは消えそうな程小さく、しかし次第に大きくなり、空気を伝わって反響していく。

その声に、アスランの意識が急激に引き寄せられて。
肉体から精神を引き剥がすかの如く、強く強く。




そして。

「………………っ」

ふる、と睫毛が痙攣し、やがて目蓋がゆっくりと開かれていく。

闇と血の色の精神世界の悪夢から、アスランの意識が現実へと連れ戻された瞬間だった。



「………ぁ、………………っ」

永く伏せられていた目蓋に隠されていた翡翠の眸が、ぼんやりと『現実』を映しこむ。
しかし未だ夢と現つの境界があいまいで、焦点は定まっていない。

「あ、アスラン!?」

漸く訪れた彼の目覚めに、キラは思わず立ち上がりかけ、身を乗り出すようにして名を叫ぶ。
覗き込んだ顔はやはりまだ現状を把握できていない表情で。
ゆるやかな動きで眼をキラへと向けて。

声。
誰かの、声。
自分を呼ぶ、声。

誰。
声は、誰。
呼ぶのは、誰。

霞む視界に入り込む誰かの影に、アスランはぼやけた眸をそちらへ向けて。

ああ。
キラ。
声は、その姿は、キラ。

良く知っている、けれど、どこか懐かしいような、遠く離れてしまった、キラ。

「………キ、ラ………?」

吐息に混じった弱々しい声音で彼の名を発した。

キラがいる。
でも、どうして。
彼は、確か。
そう、確かに。

シンに、撃たれて、そして。


ひどく痺れたような思考を巡らせて、アスランはキラに起きた出来事を思い出していく。

それはほんの僅かの瞬間のようでいて、とても永い時間にも感じられる程。

アスランはぼんやりとキラを見つめていて。
キラもまたアスランの様子を食い入るように見つめていて。

やがて、アスランが大きく眼を見開いた。

そうだ。
キラは、シンに、撃たれた。
シンが、キラを、討ったのだ。

だけど今此処にキラが居る。

その光景に一気にアスランの意識は覚醒した。

「キラ………ッ!」

もう一度名を口にする。
今度はしっかりとした声音でキラを呼ぶ。
と同時に心が身体を突き動かして跳ね起きようとする。

しかしそれは叶わない。

「…っ、ぐ、あ、ぁ…ッ!」

全身に走る激痛。
指ひとつ動かせない程に身体は重く痛みしか感じない。

「駄目だよ、まだ動いたら駄目だから!」
漸く長かった昏睡から目覚めたばかりの身体を動かそうとするアスランの様子に、キラは焦りその肩に手をかけて彼を制した。
「アスラン、動かないで…今は寝てて」
優しく諭すようにキラは告げて、ほぅ、と安堵の溜息をついた。

目覚めたなら、大丈夫だ。
もう、彼は、死なない。
命を失う心配はなくなった。

覚醒した意識と共に視界が開け、アスランはしっかりとキラの姿を見つめている。
肩に触れるキラの手から伝わる暖かさに、鼓動に、此処が『夢』ではなくて『現実』だと。

それを無意識に理解した刹那、アスランの視界が急にまたぼやけていった。

つ、と頬を伝う水の感触。
熱く潤う眼。

アスランは自分が泣いている事にも気付かずに、ただじっとキラだけを見つめて。

「…お、まえ………生き、て…た………!」

絞りだすような声で必死にそれを伝える。

「うん、生きてるよ………僕も、君も、…生きてる…から…」

きっとアスランはあの艦で自分が撃墜されるのを見ていて、そして、この世から消えたかもしれないと。
ずっとそんな不安の中で過ごしていたのだろう。
だから今キラの姿を見て、驚愕と安堵が一気に押し寄せているのだ。
アスランのその気持ちはキラにも痛い程伝わる。
キラも、アスランが目覚めるのを同じ気持ちで見つめていたのだから。

「ちゃんと、生きてるから………アスラン」

アスランの涙にキラの眸も熱くなる。
震えそうになるのを必死に堪えてやんわりと微笑んで彼に二人とも生きているという『事実』を伝えた。
その言葉を受けてアスランもうすく微笑って。

「………………………」

再び、ゆっくりと、目蓋を閉じた。

まるで恐い夢から解放されたような、幼子のように。
安らかな表情を浮かべて、ほんのひとときの眠りについた。

まだ術後の痛みを取り除く麻酔が切れていないのだろう。
夢と現つを行き交う意識ではきっと今の事を、アスランは覚えていないだろうけれど。

それでもいい。

生きてさえいてくれたらいい。

キラは眠るアスランを静かに見つめ、そしてベッドの端に蹲る。
そこには包帯が巻かれ点滴の針が刺さった、細く白いアスランの腕。
その腕にそっと触れて。

「………アスラン…生きて戻ってくれて、ありがとう………」

そう呟いて、溜まった涙を一粒、落とした。



それから直ぐにキラは立ち上がり、ベッドサイドにある端末で医療スタッフにアスランの容体を伝え、そして、この時を誰よりも待ち望んでいた人を呼ぶ。

もう、会わせても平気だ。
まだ身体は癒えていないけれど、云えない傷もあるけれど。

でも峠は越えた。

「…マリューさん、そこにカガリはいますか?。アスランが…目覚めた、と伝えて下さい」

短く用件を伝えて通信を切る。

間もなく医療スタッフと共に息を切らしてカガリがやってくるだろう。
泣きながら、だけど安堵しながら駆けてくるだろう。

それまで、見ていよう。

今はまた眠ってしまったけれど。

アスランの寝顔を、今は一人、見ていよう。



キラは椅子に座り静かにアスランを見守り続けた。
Category [ 時系列(No.05)【侵食】 ]
Thread Title[ 機動戦士ガンダムSEEDDESTINY ]   Thread Theme [ アニメ・コミック ]
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