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管理人ひさこによるガンダムSEED DESTINY及び蒼穹のファフナーのファンサイトブログです。オフィシャル等とは一切関連はございません。
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永遠のパズル
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/10[ Mon ] 23:49
をUPしますたよ。
コレでこのタイトルは終わりです。

でもって20のみR18裏にUPしますた。

つうかこれからするんで暫し待て。

今回のエロは一番難産でしたよ。
予想以上にシン崩壊して、アスランなかなか暴走してくれなくて。
やはり暴走はシンだね(おい)。

なので予定と違って意外と幸せそうな(強調)エロになりました。

あっれー。

でも今後の展開がアレなので、切なくなるよう心掛けたつもり。


次回以降タイトルは変わります。UPは近いうちに。
明日できるかなあ。わからんが。
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Category [ 時系列(No.03)【永遠のパズル】 ]
永遠のパズル 17 (#35)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/10[ Mon ] 23:29

原型を留めない程に壊れたインパルスが、AA討伐作戦に参加していた他艦隊のMSに回収され、ミネルバへと戻ってきた。
故障して内部から開かなくなったコクピットを整備クルーが外部から無理矢理抉じ開けると、シートにくたり、と座ったシンが五体満足で其処に居た。
機体の余りの損傷に皆一抹の不安をもってコクピットの開放を見守っていたが、シンの無事な姿を確認し安堵した。

インパルス帰投の知らせを受けてルナマリアとレイが格納庫へと走りだした。その際ちらり、とレイがアスランを見やる。
アスランは未だ呆然としてモニターの前で立ち竦んでいた。顔色は真っ青で、今にも倒れそうな程で。
レイはにや、と微笑して視線を前にむけ走った。

やがてアスランがびく、と動き虚ろだった眸に光が戻った。激しさを含んだ翡翠色が何も映さなくなったモニターを睨み、そしてアスランはくる、と背を翻して格納庫へと歩きだしていく。
その時眸に宿ったものは、理性から解放された剥き出しの感情だった。

格納庫では整備クルーや駆け付けた仲間達がシンを歓迎していた。
先程までコクピットで疲弊していたシンも今は元気を取り戻し明るく振る舞っていて。それでも紅の眸は出撃前と同じようにぎらついて。
しかし皆シンの内面に隠された激しさに気付かないでいた。

「………っ」
仲間達に囲まれていたシンが息を飲み、視線を一点に集中させた。シンの様子に皆がそちらを見やると。

其処には、アスランが、居た。

彼はシンに群れる人から離れて一人たたずんでいた。何時の間に来たのか判らなかった。
つ、と群衆を抜けシンがアスランへと歩みだす。
「………誉めてくれませんか?」
そう云ってアスランの前で立ち止まると、じ、と相手の翡翠の眸を睨み付ける。
しかしアスランは何も云わず、シンを睨み返して。
二人を取り巻く空気の重さに辺りが静まり返る。
「あんたの分も仇とってきたんです。誉めて下さいよ」
またシンが挑発するように云った。
だがそれは真実でもあった。

ステラだけでなく、彼の分も。

シンは怒りをあの機体にぶつけてきたのだ。
顎を突き出すようにして見上げると、アスランがぎり、と唇を噛み締めて。
握り締めていた拳が、動いた。

「………ッ!!」

刹那、シンの頬に衝撃と共に激痛が走った。

殴られた。

アスランに。

一瞬驚いてシンがよろめきながらも殴りかかったアスランを鋭く睨み返す。

「…っ、な、んだよっ、あんた!!」
「煩いッ!!」

シンが叫ぶと怒鳴り返された。アスランはシンのパイロットスーツの胸元を掴みあげ、ぐい、と力任せに引き寄せる。
その眸は、その眸が映す感情は、『憤怒』だった。
間近で彼の顔を見て漸くシンは、アスランが自分に対して、怒り狂っていると、気付いた。
今までにも幾度か怒鳴り付けられて張り倒されてはきたが、こんなにも激昂し怒りをむけられたのは初めてだった。

知らない。
こんな、激しい彼は、知らない。
理性が飛ぶ程に、感情をぶつけてくる彼を、知らない。

シンはアスランの気迫に押されそうになった。

「お前…どう、して…あいつを討った…っ」
シンに顔を近付けてアスランが絞りだすような声音で呻く。
「あいつは、お前を殺そうとしたか?。お前に憎しみをぶつけてきたか!?」
「…っ、何ですか、それっ」
シンにはアスランの言葉が理解出来なかった。
「お前はっ、討つ気もない相手を何故討った!?」
「っん、なの決まってるでしょ!?。アレが敵だからですよ!!」
激しい憎悪をシンに向けてくるアスランは自分の頭の中が深紅に染まっていくように思えた。

この感覚は、あの時以来、だ。
アスランがキラと、殺しあおうとした、あの時のような。

「…っ、敵、だと…?。殺意のない者を、お前は敵だと云うのか!?」
「そうでしょう!?、だってアレは戦場を混乱させてかたんだ!。戦争をなくそうと戦う俺達の邪魔をしてきたんだ!!」
その言葉にアスランは自分に殴られて頬を赤く腫らしたシンを、本気で睨み付けた。
その眼差しは、普段の冷静な彼を識る者ならば驚く程に激昂していて、獣を思わせるような激しさを孕んでいて。

負けじと歯向かうシンですら怯んでしまって。

「では、お前は…っ。俺達を攻撃し、ハイネを…撃墜した…ステラは、敵だと思うか?、思わないか?。どっちだ、シンッ!!」

アスランの言葉にシンが眼を見開いた。
唇を薄く開き、愕然とした。

それ、は。
その事実、は。

シンの思考を、激しく軋ませる。

「…っ、う、るさい…っ。煩いッ!!」

シンが眼を背けてきた事実を、アスランが突き付けた。
駄々をこねるようにシンが頭を振ると、アスランがまた拳を振り上げて殴った。
先程は何とか耐えられたが、今度は衝撃にシンが床に倒れこみ、格納庫に乱雑に置かれた機械に背をぶつける。

「シンっ!?」
倒れこんだシンに、ルナマリアが駆け寄った。
それまで気迫に押されて見つめるだけだった他のクルー達も、シンが倒れたのをきっかけに動きだす。
今尚殴りかかろうとするアスランをヨウランとヴィーノが必死にしがみついて押さえ込む。
倒れたシンをルナマリアが抱き起こし、レイがアスランとシンの間に割って入った。
「離せっ、離せッ!」
「…アスラン。貴方は今自分の立場を判っているのですか?」

掴まれた腕を振り払おうと暴れるアスランに、レイが冷たく言い放つ。

「…な、に…?」

「AA、そしてフリーダム討伐は本国からの、評議会からの正式な命令です。そして我等は本国を守る為に自ら志願したザフトの軍人です。シンも、アスラン、貴方もその一人です」
「レ、イ」

彼の言葉に、アスランの頭が一気に冷えていく。

「シンはいち軍人として命令に従い、そして見事撃破した。それは称賛されるべき事で、今貴方がしたように侮辱するべき事では決してない」
そう云って、レイの眸がアスランをぎらり、と睨む。その迫力は、アスランの記憶に眠る人を彷彿とさせた。

まさか。

一瞬レイに、彼の人のイメージが重なる。

「アスラン、貴方は今何処に居るのですか?。貴方は今どのような立場ですか?」
更にレイはアスランを追い詰める。
その言葉は漸く起き上がったシンにも届いていて。

軋む心にじわりと染み込んでいく。

「貴方は今、ザフトに復隊し、そして特務隊という責任ある立場でこのミネルバに乗り込んでいる。そして我等パイロットの上司だ。その貴方に命令を守ったシンが侮辱するいわれはない!」

レイが、強く言い切ると、アスランの全身から急に力が抜けた。

「………ぁ」

「アスラン、貴方は今一度自分の立場をよく考えて下さい」

レイの言葉は、ザフト軍人として、間違ってはいなかった。周囲の視線がそれを物語り、アスランではなくレイに賛同していて。
激情に流されたアスランにひどく冷めた表情をむけていた。

アスランの云う論は、確かに個人的感情が多分に含まれてはいたが、先の大戦を経験し、あの凄惨な戦場を生き延びて、人間の愚かさを思い知らされた者として間違ってはいないかもしれない。

しかし、今この場に居るのは、先の大戦を識らない者が多くて。
かつてのアスランが思っていた感情を持ち続けている者達ばかりで。

アスランの言動を理解出来る者は今この場にはいない。

この瞬間、アスランは己の居場所を、迷い悩んで、それでも選択したこの居場所を、自ら壊したのだった。

やがて騒ぎを聞き付けた保安担当のクルーが格納庫にやってきて、レイの言葉に打ちのめされ呆然としているアスランを連行していった。

「シン、大丈夫か」
連れ去られていくアスランの背中を一瞥し、レイはシンに声をかけた。
「………ああ、平気だ」
シンは遠くなる彼の背中をじっと見つめながらよろ、と立ち上がった。
心配そうなルナマリアや他のクルー達が見守る中、シンはそれ以上何も云わずに。

沈黙したまま格納庫を出ていった。
連行されたアスランを追うかのように。
Category [ 時系列(No.03)【永遠のパズル】 ]
永遠のパズル 18 (#35)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/10[ Mon ] 23:28
艦長室に連行されたアスランは、軍規に従い罰を受ける事となった。
アスランは問い詰めるタリアの言葉にも一切反論せず沈黙したままで。
立場上かタリアの同情か、営倉入りは免れたものの、暫らくは自室での謹慎となり、一切外に出るなと命じられた。
ドアの外には見張りなど置かず、実質アスランが頭を冷やすまで、自主的に判断して出てこいと。

そういう意味合いを含んだ処分だった。

一般兵ではないアスランを、そんな判断が出来ないまでに落ちぶれたとは考えず信頼した上でのタリアの判断に、アスランは本気で申し訳なく思った。

自室に籠もり、明かりもつけない暗い室内でアスランは独りで。
ベッドサイドに座ってぼんやりと床を見つめていた。

撃破された後、フリーダムの機体は一切見当たらなかった。多分海に落ちたのだろう。
モニター越しでちゃんと確認は出来なかったが、インパルスのソードは寸での所でコクピットから逸れていた。

ならば。キラならきっと。

誰よりも優れたパイロットだ。
怪我はしていても命は助かった可能性がある。
かつて自分達が殺しあった時、あの爆発の中で生き延びた彼ならば。

アスランはかつての過ちを思い出しながらも、ぎゅ、と拳を握り締めて。
そんな願いに自分の気持ちを縋りつかせた。



その時、急にドアが、開いた。
明るく照らされた通路の照明の光が一気に暗闇の室内に溢れ、闇に慣れたアスランは眩しさに眼をしかめた。
ドアの方を見やると、逆光に照らされた、よく知るシルエットが浮かぶ。

「………何の、用だ。………シン」
低い声音でアスランが呻くように彼の名を呼んだ。
慣れた手つきでキーロックを外し、ドアを開けたのはシンだった。
俯いたままで室内に入ると、再びドアを閉めてキーロックを内部からかけて。
そして照明をつけて室内を照らすと、シンはアスランに近寄ってきた。
その表情は先程格納庫で見せた激しさを孕んでいたが、密かに眸は揺れている。

「出ていけ、シン。今更俺に何の用だ?」
座ったまま動かずに、アスランは自虐的に微笑して告げる。
「負けた俺にもう用はないだろう。それともさっき殴られた仕返しにきたのか?」
ベッドサイドに座るアスランを見下ろすように立ち止まったシンを、アスランはぎらり、と睨み付けて。

「………ああ、また、俺を犯しにきたのか………?」

そう吐き捨てるように云うアスランには怯えるような素振りはなく、逆にシンの感情を挑発していた。

アスランの言葉に、シンが眼を見開いて。一気に頭に血が昇る。

「それが…あんたの、望みなら…っ」
「ふ、今更何を」

す、と立ち上がるとアスランはシンの胸元をぐ、と掴んだ。

「俺はお前にこの身体をやる、と云っただろう?。壊すなり殺すなり、好きにしろ」

「…ッ!!」

シンは息を飲んだ。

覚えていた。

あの時、ぼろぼろになるまで犯され朦朧としながら呟いた言葉を、アスラン自身が覚えていた。

シンの中で軋んでいた何かが、完全に崩壊した。

「…ああ、判ったよ。壊してやる。あんたを。俺がッ!!」
そう叫んで、シンはアスランの腹部を蹴り上げ、ずる、と床に崩れ落ちた彼の身体に乗り掛かった。


床に押し倒されたアスランは抵抗すらしなかった。
蹴られた腹部の痛みに眉をひそめながらも、シンを睨み返している。その視線の強さにシンの『雄』が、征服欲が刺激される。
白いブーツを脱がし、スラックスを力任せにずり下げた。
途端に顕になったアスランの白い脚にシンは注視した。

細い、脚。

一瞬頭によぎった考えは、しかし目の前のすらりと伸びた脚に掻き消されていく。
足首を両手で掴み上げ、ぐい、と開いて自らの肩に乗せて身を乗り出すと、アスランの脚は胸につきそうな程折り曲げられた。圧迫される姿勢で苦しいはずなのに尚もアスランはシンを凝視していて。

こんな激しい翡翠を見たのは初めてだった。

いつも、結ばれてからはいつも優しく色付いていた翡翠が、今は刺すような鋭さを秘めていて。

シンは性急に己の欲望をスラックスからおもむろに出すと、アスランの蕾にあてがった。
其処はまだ過日の行為で傷つき、入り口の肉が裂けて塞ぎきらずにぷくり、と盛り上がっていた。

癒えぬまま何度も犯し、熱を持った秘部は化膿していて。

シンは明るく照らされた中で、初めて其処を見た。

己が今までしてきた事を、愛しい彼に強いてきた結果を、初めて見たのだ。

「………っ!」
「シン?。どうした、入れないのか?」

おののくシンにアスランが冷たく言い放つ。
其処の傷を見られてもアスランは動揺すらせずに、どうせいつものように散らされるのだと考えて、シンの欲望を自ら手を伸ばして掴んで。
腰を揺らして先端を誘導するが如く己の中へ突き入れさせた。

「………っ、ぐ、ぅ………ッ」

局部に走る、身を裂かれる痛みにアスランが呻く。
その声を聞いて、秘部を凝視していたシンが彼の身体を覆う軍服を剥ぎ取るように脱がした。
「…っ、シン…っ」
アスランは抵抗しない。
今までは脱がされる事無く犯されてきただけで、今全裸にされて犯されても、凌辱される行為は何ら変わりはないと思ったからだった。しかし。慌てるようにアスランから軍服を剥ぎ取り、たくし上げたアンダーシャツから覗いた胸元を見て、シンは硬直する。

「…っ、ぁ、あぁ…っ」

わなわなと震えて怯えだしたシンに、アスランは眼を剥いた。

「シ、ン?」
「あ、ぁ…っ。俺…俺………ッ」

先端が内部を貫いたままの姿勢で、シンが震える度にアスランにそれが伝わる。アスランの胸に顔をつけて蹲るシンは眼を開いて慟哭していた。

彼の様子がおかしい事にアスランは漸く気付いた。
Category [ 時系列(No.03)【永遠のパズル】 ]
永遠のパズル 19 (#35)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/10[ Mon ] 23:27

「シン、お前………?」
「…っ、あ、俺…こんな…こんな事…っ」
「っ、おい、シン…ッ、う、あッ」

震えながらシンが動いて、ずぶり、と肉がめり込んできてアスランは喉を反らせて喘いだ。そんな動きにすらシンは動揺して。

「あ、あぁ…っ、うわぁぁぁーッ!!」

狂ったように叫んで、シンはアスランから離れた。

見てしまった。

己がしてきた結末を。
彼にしてきた傷跡を。

はだけたアスランの胸は、かつて愛し合った時と違って、ひどく痩せていて。鍛えられた筋肉も削げ落ち、骨張った身体になっていた。
先程見た脚が細かったのも、同じで。しなやかだった筈の脚は弱々しく見えて。
所々に自分が殴る蹴るなどしてつけた痣が散らばっていて。

シンは、アスランを汚してきた事実を認識してしまった。

「…っ、ぁ、あ…っ」
「シン…?」

床に蹲ってがたがたと怯えるシンに、アスランは身を起こして近づく。
するとシンはびくり、と震えて彼から逃げるように後ずさる。
「おいっ、シン!?」
「う、わぁぁッ」
肩を掴むとシンは錯乱し暴れだした。

「…っ、あ、んた…その、身体…っ。俺、俺が…っ」

アスランはそれを聞いて、彼が自分の傷ついた身体を見て錯乱したのだと漸く気付く。

そういえばシンは、直情的で激しい一面ばかり目立つが本来は繊細な少年なのだと思い出して、今この身体を見て己のしてきた行為の罪深さに耐えられなくなったのだと。

確かに、ひどくみすぼらしい身体だった。

初めて犯されてから然程時間はたっていないが、ショックで食欲は減り、食べない日が続いたりもしていた。
欠かさなかったトレーニングすらしておらず、鍛えられた肉体が貧相なものになるのはひどく簡単な事で。
自分の裸体を余り気に掛けてなかったアスランが、今シンが怯えるのを見て改めて認識する。

「………シン」

アスランは先程まで荒れていた心が穏やかになっていくのを感じながら、シンを抱き締めた。逃げようとする彼をぎゅ、と強く抱いて。

「こんな、みすぼらしい身体じゃ、勃たないか?」

そう云って苦笑する。

「ア、スラン………ッ」
「いいから、気にしなくていいから。お前だけが悪い訳じゃない。俺も………弱かったんだ」
「ち、違…っ、俺が…ッ」

抱き締められたシンは彼の薄くなってしまった肩に顔を埋めて、堪え切れずに涙を落とした。アスランの肌にじんわりと吸い込まれていく。

「俺が…っ、俺が悪いんだ…っ。あんな、あんな…ッ」
「シン…いいから」
嗚咽混じりで喋るシンの黒髪をアスランは優しく梳いた。
「ほら、立って…」
抱き締めたままアスランがシンを立ち上がらせて、そのままベッドへと一緒に倒れこんだ。

「この身体を見たくないなら…服を着るから」
「違うッ、アスラン…アスラン…っ」

別に見たくない訳ではない。愛しい彼の身体だ。
しかし、その身に残る傷跡を見るのは辛くて。

「じゃあ…シン」
そう云ってアスランはベッドから立ち上がって、残された衣服を全て脱いだ。顕にされた、細い身体。
シンは驚いて、眼を見開く。

「…もう、俺の事は、厭か?」

全裸になったアスランが首を傾げて哀しげに微笑った。
シンの大好きな彼の癖。
横たわったままのシンが、ぶわ、と涙を溢れさせた。

信じられなかった。

彼は今、自分に要求しているのだ。
先程の荒々しい意味合いとは違って。
今愛しそうに、こんな、罪を犯した自分を愛しそうに。

抱いてくれ、と。

何故こんなにも慈悲深いのだろうか。
何故自分を許せるのだろうか。

シンは顔を隠さずに、子供のように泣きじゃくって。

「…アスラン…」

と。

かつて愛しい気持ちを込めて呼んだ彼の名を。

変わらずに呼んだ。

その瞬間、シンの中にずっと根付いていた醜い感情が一気に掻き消された。

憧れていた彼が不様に負けた事への怒り。
自分を頼ってくれなかった彼への怒り。
自分の思いを理解してくれなかった彼への怒り。
敵をかばう彼への怒り。

憎悪、嫉妬、悲哀、絶望。
様々な思いが積み重なってシンを駆り立て、増長させて残酷な人間にしていた。

それらが全て、浄化される。


「…厭、じゃ…ない…」
「俺を、好きか…?」
「っ、うん、うん…っ。好きだっ、好きだぁッ」

子供のように泣きながら叫ぶシンにアスランはそっと手を伸ばして。

「…俺も、お前を、愛してるよ…シン」

そう、哀しげに、呟いた。

アスランの告白にシンは起き上がり、伸ばされた手に、怯えながら自分の手を伸ばす。

「い、いの…?」
「ああ。いいんだ、シン」

触れ合った指先が、熱い。

「お前も俺と…同じ想いなら。…愛してくれない、か…?」

そしてぎゅ、と手を握り。
アスランは一筋の涙を零してシンの身体に縋りついた。
Category [ 時系列(No.03)【永遠のパズル】 ]
永遠のパズル 21 (#35)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/10[ Mon ] 23:24
ずる、と抜け出た其処からシンの精液が伝い落ちた。

くたり、とシーツに沈んだアスランは眸を閉じていて。
疲れた表情を浮かべた彼の目尻には涙の跡が残っている。

シンは己のした事を悔やみながらも、彼がそれを許し、受け入れてくれた事を本当に嬉しく思った。

既に犯した罪は消えないけれど。

それでも、この傷ついた身体でシンの想いを受けとめてくれたアスランが、愛しくて。

彼が許してくれるのならば、もう一度やり直したい。

最初から、愛したい。

痩せた身体。傷ついた身体。
シンを、愛してくれた身体。

そんなアスランを。

もう失えない。

眠るアスランを見つめるシンの表情はひどく切なげで、幸せに満ちていた。



汗がひいた素肌を冷やさないようにと、もそ、と毛布をかけてやり、シンもその隣に潜りこんだ。
やがて彼の肌から伝わる暖かさに安堵して、シンは眠りについていった。





シンが眠りについたのを確認して。

アスランが眼を開いた。

「………っ」

安心して幼子のように眠るシンを起こさぬように、細心の注意をはらってアスランは怠い身体をのそ、と起こした。

『シン』と。

声に出さず名を呼ぶ。

これで、いい。
思わぬ形になったが、それでも。
彼ともう一度想いを通わせる事ができた。

自分ばかり苦しいと思っていた。
でもそれは違っていた。
彼も、苦しんでいた。

気付いてやれなかった己の罪だ、これは、と。

アスランは溜息を零した。
好きだと告げた気持ちは偽りではない。
今もひどく彼にひかれている。
全てを失っても彼と共に歩みたい。



しかし、その為には、しなければならない事がある。

『シン、ごめん』と。

また声もなく呟いた。

もう決めた事だ。
錯乱したシンを見て、胸が痛んだけれど。
でも。それでも。



ふとシンの顔を見つめていた視線を逸らして、デスクの上に置かれたノーとパソコンを見つめた。



これでいい。
きっと彼は怒るだろうけれど。
裏切られたと思うだろうけれど。

もう、逢えないかもしれないけれど。

シンからの愛で満たされた身体ひとつ、あればいい。
シンを想う心は彼に全て与えた。
自分はシンに愛された身体だけあればいい。

迷い悩んだ罪。
真実に気付かなかった罪。
かつての仲間を裏切った罪。

そして。

これから重ねる、罪。

多くの罪を重ねた罪人の自分にはそれで充分すぎる。


『シン、愛してる』


唇だけを動かして声もなく呟いたアスランの翡翠の眸に揺るがない決意が鋭く宿り、そして。






一筋の涙を零した。
Category [ 時系列(No.03)【永遠のパズル】 ]
永遠のパズル 15 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/09[ Sun ] 23:32
コクピットに座ってまずはシートベルトを締める。右手をあちこちに動かして計器類をオンにし、眼はそれら全てをチェックする。

シンは出撃前のいつも通りの行動をしながらも今自分がひどく冷静な事に気付いた。
心は憎しみで埋め尽くされているのに、頭は冷めている。
これからあの『フリーダム』と、何よりも強いあの機体と剣を交えるというのに。もしかしたら…破れるかもしれないのに。

しかしそれでも。
行くしかないのだ。

でなければ自分はいつまでも囚われたままだ。

だから今。自分がどうなろうと、行かねばならないと。

改めてそう決意した時ミネルバから発進許可の通信が入った。

「シン・アスカ、コアスプレンダー行きます!!」

叫ぶと同時に握る操縦桿をぐい、と操作して。
次の瞬間、射出された為に重くのしかかるGがシンを襲い、暗いカタパルトから一転して吹雪く山岳地帯が見せる白のコントラストが視界に広がった。



AAはミネルバに任せてシンはたったひとつに集中する。
あの白い機体。青い翼を広げた『自由』だけを。
それだけを、狙う。

フリーダムはAAに襲い来る砲撃を防ぎ、時には砲弾を打ち墜とし、『大天使』を守護している。
目標を定めてシンの駆るインパルスは右手に握る高エネルギービームライフルを相手に向け発射した。
瞬時にかわされる。
勿論それは判りきっている。
その程度で撃たれる相手ではない。
だから発射しながら背部のブースターを全開にして一気に距離を縮め、ヴァジュラビームサーベルをフリーダムめがけて振り下ろした。
それも簡単にシールドではじかれる。
しかしシンは怯む事無く、逆にヘルメットの中で薄く微笑した。

これでいい。これで相手の注意はAAを取り巻く艦隊から自分にむいた。
あとはAAから引き離し、一騎打ちに持ち込む。それからだ、全ては。
レイと共にシュミレートし、何度も策を練った上で導きだした作戦を実行するだけだ。

大丈夫、大丈夫だ。うまくいく。
俺は、あいつを、倒す。
倒すんだ、絶対に。

シンの柘榴の眼は、血のように赤くぎらついていた。



アスランは出撃を待機するアラートに設置されたモニターでこの戦闘を食い入るように見ていた。同じようにルナマリアとレイも各々想いを抱きながら見守っている。
アスランはシンが攻撃する度、キラがかわす度、肩をびくり、と震わせて。

耐えられない。
この状況をとても正視出来ない。
けれど翡翠の眸は繰り広げられる戦いから逸らせられない。
それは己の中で燻る『戦う者』としてなのか、一人の人間としてなのか。
しかし、親友であるキラが、想い人であるシンが、戦う光景はアスランの精神を確実に追い詰める。
アスランには争いをなくそうと戦場を駆けるキラも、その彼を…殺そうと出撃したシンも、もう止めるすべを持たない。
こんなにも無力さを感じるのは何故なのか。
キラを失いたくないのか、シンを失いたくないのか。
答えが見いだせないままに、モニター越しの戦闘は激化していく。
この戦闘がもたらす結末は、どちらにせよ、アスランを確実に狂わせるだろう。
それでも、今は見届けるしか、アスランには出来なかった。



何度もビームライフルを撃つ。その度にかわされ逃げられる。向こうも威嚇してビームライフルを撃ちこんでくるが、シンはそれをあっさりとかわした。
追いながら次第にフリーダムをAAから引き離していく。

「逃げるな!」

ミネルバだけでなく他艦隊からも攻撃され始めたAAに戻ろうとするフリーダムの先に躍り出て進路を阻みながらシンは叫んだ。

「うおおぉぉ---ッッ!!」

その時、シンに異変がおきた。視界が急にクリアになり、しんしんと降り積もる雪ですら粒が見える。思考はひどく冴えて自分と相手を取り巻くものが全て理解できた。

戦わず逃げながら上昇するフリーダムに、インパルスは激しく追い上げながらビームライフルを撃った。

「………っ!」

刹那、フリーダムを駆るキラが、息を飲む。
辛うじて避けた射撃は確実にフリーダムの頭部を狙っていた。
先程までは冷静にかわせていた射撃が、撃つごとに正確性を増し狙いをつけてきている。そして今、急にその腕前があがったのだ。
戦いながらも成長しているインパルスに一瞬怯み、急激な成長にキラは悟った。
インパルスを駆る彼も、自分と同じ『シードを持つ者』だと。
それが今弾けただろう事も。

本気だ。本気でフリーダムを、自分を撃墜しようとしている。

勿論今まで戦ってきた相手も同じだが、インパルスはそれらと違っていた。
動揺せず臆せず怯まず向かってくる。
相手を突き動かしているのは何か。
それは、きっと、憎悪だ。キラは本能でそれを理解した。
自分も先の大戦時に経験したものだ。かつて憎悪に身を焦がし、殺しあおうとした、あの記憶。
それを今、彼がこの場に居ない今、追体験するかの如く。

不意にキラの背筋がぞくりとした。
キラはフリーダムを反転させて追い付こうと飛ぶインパルスに向かい、ビームライフルを何度も撃った。
威嚇ではなく、撃墜せずとも武力を削ぐ為に確実に狙いを定めた射撃を、インパルスはいとも簡単に避けながらブースターを噴射して迫ってくる。
追い付く寸前、フリーダムもインパルスも同時にビームサーベルを引き抜いた。そして空中で剣をぶつけあった。
衝撃で離れた瞬間、インパルスは自らのシールドを投げ、それに向けてビームライフルを撃つ。シールドに弾かれ屈折した光はとっさに避けたフリーダムの腹部を掠めた。
その隙を見逃さずビームサーベルを振り下ろすと、相手の動きの方が勝っていて逆にインパルスの腕が切り落とされた。

「ミネルバっ、チェストフライヤーを!」

シンが母艦に新しい部位の射出指示をする。と同時にインパルスを構成するパーツを自ら切り離し、コアスプレンダーだけで飛行しながら壊れた他の部位を捨てた。
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永遠のパズル 16 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/09[ Sun ] 23:31
思わぬ行動に出た相手にキラは驚く。
コアスプレンダーが砲撃しながら近付き、フリーダムの胴体に食い込んで、その勢いにキラは地面へと落下し始めた。山岳に墜ち、斜面を滑る衝撃に逆らえずキラは操縦桿を握り締めながら必死に耐えた。
ミネルバから射出された部位を瞬時に換装し、シンは墜ちた相手にビームサーベルを振り下ろしながら叫んだ。

「逃がさないと云っただろっ!。お前は俺が…ッ!!」

辛うじて避け、再び空に上昇したフリーダムをインパルスが追う。
シンの気迫に逃げ続けるキラは、ある錯覚に陥った。

これ、は何だ。
これは、誰だ。

襲い来るインパルスに、過去の記憶に眠る、あの悪夢が重なった。

赤い、機体。
親友が乗っていた、深紅の機体。
『イージス』。

インパルスの白い機体の後ろに、かつて殺しあおうと激突した、『アスラン』の駆る『イージス』が見えたような気がした。

そうだ。今彼は、アスランはインパルスと同じミネルバに居る。ならばインパルスのパイロットは彼の戦い方を識っている筈だ。そして多分きっと指導も受けているだろう。
アスランも射撃は正確だった。ならば彼もその指導で、少なからず影響をうけている筈だ。
先程頭部を掠めた射撃にふとアスランを思い出したのは、インパルスが無意識に彼と同じように撃ち抜こうとしたからだ。
そして今も。インパルスの攻撃はどこかアスランを彷彿とさせる。
似ている訳ではない。だがキラを撃ち墜とさんとする気迫は繰り出される攻撃に表れ、それがあの時のアスランに重なるのだ。

「お前が…っ、お前がステラを殺した…ッ!」

シンが叫びながら空中でフリーダムに何度も襲い掛かる。

「お前が、アスランを墜としてッ、ステラを殺して…ッ!」

叫びながらシンの中で何かが軋む。

「絶対に、許さない…ッ!!」

フリーダムが真横から振り回したビームサーベルを、瞬時に機体を切り離して避けるとそれが爆発し、フリーダムが宙でバランスを崩した。
「ソードシルエットを!」
シンは眸で相手の動きを追いながら再びミネルバに指示を出した。
直ぐに射出されたソードシルエットを換装し、逃げるフリーダムに剣を振り投げた。
何とかそれをかわすキラは完全にインパルスに翻弄されていた。
冷静さは失ってはいなくとも、心の何処かで過去の幻影が消えない。
憎しみは力になると知っている。そして今それをぶつけてくる相手に勝つのは容易ではない事も。
それだけシンの攻撃は正確でキラの隙をつく。

このままでは駄目だ。
しかし自分はもう誰も撃ちたくない。
何も殺したくない。

キラは逃げながら必死で勝機を模索する。



いつのまにか山岳地帯を抜け荒れ狂う海原の上空にきていた。

シンはソードを握り締め、一気に背面のブースターを全開にした。
迫り来るインパルスに、キラは危険を感じ、逃げず振り向いて、その攻撃を受けとめようとした。

しかしインパルスのスピードは、キラの予測を遥かに上回っていた。

振り向いた瞬間、キラの眸に映ったのは。

「………っ!」

恐ろしく感じる程に迫るインパルスと、突き立てられたソードだった。

間に合わなかった。

インパルスのソードが、フリーダムの胴体を。

貫いた。



「…ッ!。キラ…っ、シン…ッ!!」

アラートのモニターに映った映像に、アスランが絶叫した。



刹那、貫かれたフリーダムから赤い炎が吹き出して、一瞬でそれは激しい爆発になった。

爆発の衝撃で辺りの海面が津波のように盛り上がり、爆発を中心として大きな波が発生した。爆炎が雪降る空を覆い、視界を閉ざす。

やがて立ちこめる煙の中から姿を表したのは、たった一機、インパルスだけだった。

頭部が吹き飛び、腕ももがれ、脚部はへこんでひどく歪んでいて。
損傷したインパルスの機体が、爆発の激しさを物語っていた。


「………っ、は、はは………」

俯いたまま笑いだすシン。眸はいつもの状態に戻り、しかし何処か虚ろで。何も映していなかった。
現実ではなくシンの心に眠る想いだけを、その紅に映して。

「はは、はは…っ、やっ、た…。やったんだ…っ、ははは…っ」
急に上向いてシンが激しく笑いだした。
「ぁは、はは…っ。ステラ…、アス、ラン…っ」
狂ったように笑うシンの虚ろな眸から、一筋の涙が、零れ落ちた。





「………ぁ、あぁ…っ」

がくがくと、身体を震わせて。アスランはモニターに映された光景を信じられなかった。

フリーダムが、居ない。
キラが、墜とされた。

シンが、キラを、討った。

予測していた結末のひとつが現実となった。
それは、一番あってほしくなかった結末だった。

キラはシンを殺さないだろう。
シンはキラを…殺すだろう。

だからこそ見たくなかった、結末。

決着がついた戦闘にルナマリアも呆然と立ち尽くし、レイは薄く微笑した。

全身の血が凍りつきそうな錯覚に、アスランは翡翠の眼を見開いたままモニターを凝視して。

「ぅ、あ、あああぁぁっ!!」

絶叫した。



アスランの悲鳴は、悲しく響いて空気に消えていった。
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永遠のパズル 14 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/08[ Sat ] 22:56
タリアの言葉に何も言い返せず半ば逃げるように艦長室から出てきたアスランは、自室に戻るとドアに背中を預け、そのままずる、と座り込む。その表情は俯き思い詰めた顔をしていて。

確かにタリアの云う通りだった。自分は『軍属』がどういう事か理解した上で今此処に居る。議長に『君は君の信念をもって争いをなくす為に戦ってくれ』と云われ、新しき力を与えられたのだ。その力で世界を、平和を守ろうと心に決め、一度は離れたザフトに戻った筈だ。フェイスといえども、あらゆる特権を与えられた訳ではない。己の信念で動く事は出来ても、議長から下された命は、絶対だ。逆らえば反逆と成りかねる。

しかし。議長は確かに『争いをなくしたい』とアスランに云った。
『その為に君の力を貸してくれ』とも。
カガリの護衛として影から支えるのではなく、力を持つ者だからこそアスラン自身の望むままにその願いを叶えてくれ、と。アスランを信じてくれた議長を今まで尊敬の眼差しで見つめてもいた。

だが現実はアスランの夢を打ち砕く。

議長の言葉は信頼に値する、と心を揺るがす物だが、しかし今。AAとフリーダム、つまりラクスやキラ達を戦乱を招く敵だとして討てと云う。
アスランもこの命令がなければ、彼らと何の関わりがなければ、気付かなかったのかもしれない。

議長の『真意』は、あの穏やかな表情に隠された『真意』は、果たして言葉どおりのものなのだろうか?。

一度湧き出た疑念はアスランの中で警告するかの如くシグナルを鳴らしていた。

以前キラが云っていた『ラクス暗殺未遂』の件を不意に思い出した。
その時は休む間もなく戦乱に巻き込まれるミネルバの状況に振り回され、きちんと調べる事が出来なかった。

だが今は。今ならば。

アスランは全身の力を振り絞って立ち上がる。そして視線をデスクの上に置かれたノートパソコンへと向けた。

その眸は、キラに墜とされ、シンに汚され、タリアにまで侮辱され、逃げ場を失う程に追い詰められ己の無力さに先程まで虚ろだった。
今はひとつの『疑念』によって翡翠の光を取り戻し始め、ぎらり、と研ぎ澄まされた鋭さを含んでいた。





やがてミネルバは評議会から下された命令通り、『AA討伐』の艦隊と合流する。
情報収集のプロフェッショナル達が集めた情報で潜伏場所を特定し、そのポイントへ作戦通りに集い始める。

作戦を実行する数時間前。シンはパイロットスーツを既に身に纏い、レクルームのソファーに深々と座り頭に叩きこんだ作戦とシュミレーションを繰り返していた。
その隣にはレイが当然のように立つ。二人の放つ空気にルームにいた他のクルー達は圧倒されていた。明らかに以前と違うその変貌は更に増していて、誰もが近寄れなかった。特にシンは恐ろしいまでの気迫で、その眸は倒してきた敵の流した血を連想させる程に鮮やかだった。
共に学び、戦場を駆けてきたルナマリアですら彼らには声を掛けられなくて、今も少し離れた所で様子を見守っている。

あと数時間。あと少しで、戦える。
あの『フリーダム』と、戦える。
そして、倒すのだ。絶対に、必ず。

シンはソファーに座ったまま俯いて床を睨み付けた。爆発しそうな程の人間としての『憎悪』と、何よりも強い存在と戦える事への戦士としての『昂揚』と。
それらが入り交じってシンの全神経を研ぎ澄ましていた。

全てはアレが元凶なのだ。
自分が止めようとしたステラが死んだのも、アスランがセイバーを撃墜され、力ある者が不様な姿を晒す事になったのも。
先の大戦でオーブが戦火に包まれたあの日、戦いを更なる過酷なものにしたのすら、今のシンには全てが『フリーダム』の所為だと思えてならなかった。

だが、『アスラン』の事を思い出した途端、憎悪に支配されたシンの表情が一瞬だけ、揺れた。

「…シン?」
シンの隣に居たレイが、彼のほんの僅かな異変にすら気付いて声を掛ける。
「あ…いや、何でも、ない」
「そうか」
ふ、と顔をあげてそう云ったシンの顔には一瞬の揺らぎは消えていて、レイは薄く微笑んで彼の肩を叩く。
「そろそろ時間だ。もうアラートへ向かった方がいいだろう」
レイが出撃準備を促した。
アスランだけでなくレイやルナマリアまで機体を失っている今、出撃出来るのはシンだけだ。同じMSパイロットとしての激励にも思えるレイの言葉を疑う事無く、シンは頷いて立ち上がった。

背を翻しゆっくりとレクルームのドア付近へと歩を進めようとした時。

「………っ」

シンは密かに、息を飲んだ。

開いたドアの向こうに、アスランが、居た。

シンの中で何かが激しく軋む。

「………シン」

アスランが、絞りだすような声音でシンの名を呼ぶ。

シンの部屋で此迄にない程ひどく犯し、失神した彼を見て独り慟哭して以来、二人は一度も会っていなかった。シンは今回の作戦準備に追われ、アスランは自室に籠もって何かをしていたから。

シンは人工照明に照らされたアスランの姿を柘榴の眸に映し、そして『フリーダム』への憎悪を彼にも向けて睨む。

「…あんた、今まで」何やってたんですか?」
「………」
アスランはシンの眸に怯む事無く見つめ返す。以前のように怯える事もなく、その姿は毅然としていて。
「どっちにしろ、今のあんたには出撃出来ませんからね。代わりに俺が行ってきますよ」
何も言葉を返さない相手にシンは尚も挑発する。

「あの『フリーダム』を倒しに、ね」

増長し続けるシンの態度に周囲は息を飲み。
「…っ、シンっ」
「………ルナマリア」
ルナマリアはシンを制止しようとしたが、レイによって止められた。

「あんたの『トモダチ』が乗っているアレを討ち落としてきますから」

その言葉にアスランは眸を見開き、拳を握り締めた。しかしそれでも何も云わずに。

「『トモダチ』に撃墜された、あんたの仇とってきます」

そう云ってシンは嘲笑うと、アスランの横を通り過ぎようとした。
刹那、アスランが通り過ぎるシンの腕を掴み、ぎう、と強く握り締めて。
そして、何も云わないままに彼を見つめて、その手を離した。

「………っ」
アスランに触れられた箇所が熱く痺れた。
しかしシンは逆に睨み返し、そして出撃の為に出ていった。
シンが居なくなった後の室内に安堵を含んだような溜息が誰からか漏れた。

アスランはシンが向かった先を振り返る事無く、沈黙のままで。


想いは、同じ。
見る夢も、同じ。

しかし、信念が二人の関係を歪めていく。

一時は先の未来を、同じ想いで夢見ていた二人は、今この時残された唯一の希望を失った。
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永遠のパズル 13 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/07[ Fri ] 23:00
長い、長い艦内の通路を、アスランは一人歩いていた。

デュランダル議長の演説が終わるのを待つかのように評議会、つまりそのトップである議長からミネルバに下されたひとつの命令。

『AAを討て』。

その命令に疑念と反発を覚えたアスランは、今たったひとりで通路を歩いていた。
この艦の長、タリアに掛け合う為に。

演説を最後まで聞くに耐えず、集っていたブリーフィングルームからふらりと立ち去ったアスランだったが、自室に戻った途端内線端末から呼び出しを受け、呼び出し主である副長であるアーサーから驚愕の命を聞かされた。
それがAA討伐命令だった。
アスランは言葉を失うしかなかった。

やはり先程の演説は、議長は、AAを『ロゴス』である、と断定したのだ。

違うと識っていて断定した。

思いもよらず叩きつけられた現実にアスランは打ちのめされた。
思考が空回りして冷静ではいられない。
とにかく話さねば。
命を受けたミネルバの艦長タリアと、そしてデュランダル議長とも。

そう思いアスランは今、艦長室へと続く通路を急く気持ちを抑えてひとり歩いていた。

しかし今こうなって初めて気付く。議長直属の特務隊『フェイス』に任命されても、実際は彼と直に話せる事はない。勿論直通の通信手段もない。
これでは何の為の『直属』なのかと。以前先の大戦で実の父であるパトリックに任命された時は、手段はあった。余り使う事は残念ながらなかったが。
しかし今は、ない。これでは周りのクルーと何ら変わりはない。ただ、指揮官クラスの権威を持ち、自分の意志で動けるというだけの名ばかりの存在だ。
結局自分は『ザフト』という枠に再度はまっただけではないか。

それを今更ながらに気付かされて、アスランは己の立場に激しく違和感を覚えていた。




やがて艦長室に辿り着き、中へと通される。敬礼をし入室するといつもの定位置に艦長と副長が居た。
「…それで?。アスラン、話というのは何?」
タリアがデスク越しに問い掛けてきた。その表情は突然の討伐命令を受けた衝撃の所為か、アスランと同じように強ばっている。
「はっ。先程評議会から下された命についてなのですが…」
そう切り出すとタリアは手を額にあて、深く溜息をついた。アスランにはその溜息の意味が、判らなかった。
「………やっぱり、ね」
「…は?」
「いえ、こっちの話よ。…それで?」
じろ、とタリアが額を押さえた手の間から鋭い視線をアスランにむけた。怯む事無くアスランは言葉を続ける。
「あの命は、本当なのでしょうか?」
「ええ、勿論よ。先程正式に『AA討伐隊』に我が艦も加われ、と辞令が発せられたわ」
「…っ、では…!」
「ええ。命令通りこれから我が艦は他艦隊と合流します」
「そ、んな…っ」
眸を伏せがちにしてきっぱりと言い切るタリアの言葉にアスランは思わず声を荒げそうになった。二人の間に緊張が走る。
その張り詰めた空気に、アーサーは眉を寄せ成り行きを見守っている。
普段頼りなさげな男だが、まだ若い身空で副長に選ばれた人物だ。きちんと分を弁えて、今繰り広げられている会話も機密として頑なに守り通す事が出来る男だ。だからタリアもアスランも今この場でお互いの意見を隠さず語れる。

「しかし、艦長!。あの艦は…AAは決して『ロゴス』などでは…っ!。議長もそれを識っている筈です!!。なのに何故こんな…っ」
「…それに関しては私も同感よ。だから既に議長側に説明を求めたわ」
「それでは…っ」
「…結果は、変わらなかったわ」
一瞬期待したアスランを、タリアはいとも簡単にそれ打ち砕く言葉を吐いた。
何故タリアが議長に直談判できる手段を持つのか、この時のアスランは考える余裕すらなかった。とにかく今は。『AA討伐』を問いただしたい一心だった。
「…っ、では!。やはり討つのですか、あの艦を…ッ!!」
「そうなるわね」
思わず激昂したアスランにタリアはあっさりと云う。デスクに座ったまま、正面からアスランを見定めて。アスランの言葉の真意を探るように。

「…では、アスラン。貴方は?」
「………え?」
タリアの云う意味が、判らない。眉をしかめるアスランにタリアは鋭い視線と、ひどく冷めた表情で、吐き捨てるように云った。

「貴方はあの艦を、討ちたくない、とでも?」
「………っ、艦長!!」

アスランも判っている。それはつまり、命令に背くこと、だと。
「貴方は以前あの艦に居たのは知ってるわ。それに…確か『友達』がいるのよね?。…貴方を撃墜したのも、その『友達』よね?」

翡翠の眼が、かっ、と見開かれた。

「今、戦場を駆る機体を持たない貴方が、あの艦を討ちたくないと云って、誰が聞くと?。冷静さを欠き私情に流されている貴方が何を云っても耳を傾ける人がいるとでも?」

タリアの声音は恐ろしく冷めていた。しかしその眸は、投げ掛けられた言葉に愕然としているアスランを打ち抜く。
「艦長…っ」
余りの非情さに思わずアーサーが口を挟むが勿論聞き入れられない。尚もタリアはアスランを責めた。
「アスラン、貴方は今自分が置かれた立場を判っているの?。貴方は今あの艦の一員ではないの。この艦の、『ミネルバ』に搭乗している『ザフト』のひとりなのよ!?。それなのに命令は聞けないと!?」
タリアの発言は確かに間違ってはいない。アスランもそれは判ってはいる。タリア自身この命に疑念を抱いてはいても自分の立場を理解した上で非情に徹する事を決めているのだ。

しかしアスランは迷っている。
だからタリアはあえてきつく言い放つ。

「そんなにあの艦が墜とされるのを見たくないというのならば、自分の部屋に居なさい!!」

彼女の言葉の最後は叫びだった。

アスランはその気迫に、何も言い返せない。
悔しいが事実だった。
戦場に出る事が叶わない今、アスランには何のすべもない。しかも今の自分はみじめな程無力で、墜とされて以来彼らの期待を裏切っている事も痛い程判っている。
タリアの言葉はアスランにその事実を再認識させた。
悔しいならば、立場を理解し、非情になれ、と。己が何を求め戻ってきたのか、思い出せ、と。
彼女はそれをアスランにもう一度考えろ、というのだ。

「………っ」

アスランは俯いて、ぎり、と唇を噛み締めた。その力は強く、端から血が滲む。
「話は終わり、よ。………もう、行きなさい」
タリアが退室を命じる。アスランは屈辱を感じながらもその命に逆らえなくて。無言のまま敬礼し、くる、と振り返った。
そのまま足を進めようとした時。タリアがアスランを呼び止めた。

「それと………アスラン。貴方………シン、とは?」

刹那、アスランの胸がひどく痛んだ。

「…シンを、あの子を…ちゃんと、見ててね…?」

タリアの口調は、先程までアスランを責めていたものとは違っていて。『艦長』としてではなく、『いち個人』としての言葉だった。アスランは背を向けたまま、ドアの前に立ちすくんで。



「………………………は、い」




そう、小さく頷くのが精一杯、だった。
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永遠のパズル 11 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/06[ Thu ] 23:09
意識が、ふわり、と浮遊する。

身体は重いのに、その中の精神だけが離れようと上昇するような。

そんな不思議な感覚の中で。

アスランは、霞んだ世界に、シン、を見た。

ああ、シン、だ。
シン、が居る。
俺のよく知るシンが、居る。
どこかぼんやりとした表情で、其処にいて。身体から精神が浮遊しかけている俺を、抱き締めている。
シンが抱き締めてくれるお陰で、俺は此処に居るんだ。

シン。シン…好きだ。
例えお前が、俺の想いを拒絶しても、この気持ちは変わらないから。
シン、どんな事がおきても、何をされても、俺は好きだから。

………シン………。

惚けた頭で何度も彼の名を呼び続けていると、急にシンの表情が強ばって。くしゃ、と歪んで、紅い眸から涙が零れてきた。
シンの涙が抱き締められたアスランの肌に染み渡る。
暖かい感触に、アスランの意識は心地よさを感じ、安心したかのようにまた閉ざされていった。



夢か現つか、判らぬまま。やがてアスランが目を覚ます。
「………っ、ぅ………」
シンに此迄にない程憎しみをぶつけられ、無残に抱かれた身体はひどく痛んでいて。疲弊した身体は動かない。
いつのまにか手首を後ろ手に縛っていたベルトは解かれ、冷たい床に四肢を投げ出し、乱れた軍服を身に纏った姿で倒れていた。ずり下げられたスラックスの合間から、血痕と精液の残泡が脚にこびりついているのが触感で判る。
一体どの位失神していたのだろうか。アスランは目覚めたばかりで未だ茫然としていたが、ふと自分以外の気配を、感じてはっとした。
その気配が、シン、だと本能で察して、アスランは床に倒れこんだ己の身体をがば、と無理矢理起こす。

途端に下半身に激痛が走り、思わず蹲った。
「…っ、う。ぅ…っ」
「………起きた?」
痛みに耐えながらもアスランがシンの声を辿って姿を探し後ろを振り向くと、薄暗闇の中で彼はベッドサイドに座って俯いていた。
「………シ」
名を呼び掛けて、やめる。犯されていた時にも名を呼んで激怒されたばかりだった。名すら呼べない事がひどく悲しかった。
「起きたんなら、早く身仕度した方がいいよ」
「………え?」
へたりこんだアスランにむかって、シンは視線を向ける事無く淡々と話す。その口調が、意識を失う前と明らかに違っていて、アスランは違和感を覚えた。

感情の込められていない声音。
憤怒も悲哀も、何も感じられない、声。

「…シン…?」
思わず名を呼んだが、それに対して激怒する事もなく。抑揚のない声は更に続く。

「これから、議長の会見が中継で全世界に放送されるらしいから。さっき、そう艦内放送があった」
「…会見?」
「クルーは皆ブリーフィングルームに集合だってさ」
そう云ってシンはふらり、と立ち上がった。しかし顔はアスランから背けるように俯いたままで、今彼がどんな表情をしているのか判らない。
「俺、先に行くから。あんた、ソレどうにかしてからくれば?」
云いながらシンが床に座り込んだアスランの横を通り過ぎていく。アスランの視線が彼から自分の身体へと移動して、局部を眸に映して辛そうに歪んだ。

其処は先程達しそうになった時にシンにがんじがらめに縛られたままで、未だ熱を帯びていた。

つまりは、自らソレを解いて解放しろ、と。

「…っ、シン…」
「………じゃあ」
縋るようにシンを見たが、彼は一度もアスランを見ずに部屋から出ていってしまった。

一人取り残されたアスランは茫然として今シンが消えたドアの向こうを見つめて哀しげに揺れた。
く、と唇を噛み締めて。ドアから視線を落として俯く。
シンの変わりように戸惑うも、今はそれどころではない。早く身仕度を整えて、行かなければ。
アスランは力の入らぬ手をそろ、と動かして、己の熱に触れた。
きつく結わえられた紐は肉に食い込んでいて、激痛しか感じられない。それでもゆっくりと結び目を解き、慎重にほどいていく。

「………っ、ぁ、う………」
急激にせき止められていた血流が流れ込み、一気にソレは膨らんだ。
「ぁ、…あ、あ、…っ!!」
ぶる、と震えてアスランは蹲り、己のモノを両手できう、と握り締めた。顎を床につけ、翡翠の眼は硝子玉のように虚ろにドアを見つめ。半開きになった唇から嬌声が溢れ出た。
「…っあ、は…ぅう…ッ」
握っただけで散々シンに扱かれ放出をせき止められた欲望は激しく疼き、アスランは床に射精していた。しかし長時間禁じられていた為に勢いはなく、ぼたぼたと零れるだけだった。
「あ、…っあ、う…あぁ…っ」
待ち望んだ放出はひどく長く感じられ、蹲ったままアスランは全身を激しく痙攣させて止まらない精液を床に吹き零し続けた。



ドアが閉じられた先で、シンは俯いて立ち竦んでいた。
柘榴の眸は潤み、目蓋は腫れていて。どれだけ泣いたのかを語らずとも物語る。ぎゅ、と噛み締められた唇が今にも切れそうでも、シンはじっと何かに耐えるように床を睨み付けていた。

今、己がすべき事。
それは、なんなのか。

自分に、言い聞かせるが如く。



長い長い射精が漸く止まり、アスランが快楽から冷め、その身をゆっくりと動かす。床を汚した精液をそのままにし、ずり下げられたスラックスを整えて。
散らされた蕾が激しく痛み、脚が震えていても、必死で身体を前へと進めた。


アスランがドアを開き、通路に出た時、其処には誰も、居なかった。
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永遠のパズル 12 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/06[ Thu ] 23:08
自室に一旦戻り、汚れた軍服を着替えて漸くアスランがブリーフィングルームに辿り着いた時、既に殆どのクルーは集っていた。

入り口にアスランの姿を見つけたルナマリアが駆け寄ってくる。
先程食堂から走り去っていったアスランの表情が、明らかにおかしくて。ルナマリアは問い詰めたい気持ちを必死で抑えた。

きっと今、聞いたら、この人は壊れそうだ、と。本能的にそう感じて。

困ったように見つめてくるルナマリアに、アスランは微笑んで、大丈夫だと物云わずに伝えた。
彼女がわけも知らず、それでも心配してくれているのが判ったから、心配をかけた詫びと、詮索を拒否する為に。
ふ、と視線をずらすと室内の奥に設置された巨大なモニターの前に見知った後ろ姿を見つける。
先程までアスランを犯していたシンと、それを黙認して立ち去ったレイが、居た。密かに眉をひそめたアスランは、意識を彼らから逸らしてモニターに集中した。



やがてデュランダル議長の会見が始まった。

始めは皆静かにそれを見つめていて。

『今御覧頂く映像は、過日ベルリンにて起きてしまった悲劇です』

そして先日ベルリンの街でおきた悲劇をモニターに生々しく公開した。途端、どこからともなく騒めきが湧く。

呆気なく砕かれる建築物、瓦礫に踏み潰される人間達、鉄屑と化したMS。

画面に映された地獄のような光景。それを生み出す巨大な『デストロイ』と、抗う『インパルス』の映像と共に議長の演説は続けられる。

『戦争を起こし、それによっておきる利益を我が物にせんとする、集合体「ロゴス」が今も裏で暗躍しているのです』

戦争を激化させていた『ブルーコスモス』ですら操って、戦争をわざと繰り返させている『ロゴス』の存在を明らかにした時にはその語り口は次第に熱を帯びたものになっていた。

『争う理由を生み出し、戦場に混乱を巻き起こす彼等がいる限り、争いは滅する事はありえません!』

しかし誰も、語られた事実と、真実の食い違いに気付く筈もなく。
ただ議長の心地よく鼓膜に伝わる『言葉』に聞き惚れていた。

その場の中で唯一、アスランだけが、気付く。

居るべき筈の、映るべき筈の、『大天使』と、『自由』が居ない。

あの時確かに居た筈の者達は、映像から完全に抹消されていた。



「………っ、そ、んな………」
「アスラン?」

驚愕して思わず呟いたアスランに、ルナマリアが不審そうに問い返しても、アスランは答える事無くスクリーンに釘づけになっていた。

『私はここに打倒「ロゴス」を宣言します!』

スクリーンの向こうで議長が声も高々に宣戦布告を、した。


アスランの頭の中で、シグナルが鳴り響く。

キケン。コレハキケンダ。

一斉に歓喜の声がブリーフィングルームにあがる。皆、議長の『言葉』を何の疑いもなく信じ、感動すら覚えているようで。
その姿は、ザフトに復隊した時の、アスラン自身のようで。

愕然としたアスランは、一瞬で身体が冷たくなっていく錯覚に陥った。


議長の『言葉』。それ、は戦場に突如現われるAAとフリーダムを『ロゴス』だと言い切り。

捏造された『映像』。それ、は誰が見ても地球軍の暴虐な攻撃に立ち向かうザフト、という形式を生み出し。

ロゴスを倒すという『宣言』。それ、は平和を望む穏健派と云われたデュランダルが云う筈のない言葉で。

つまり、これからザフトは戦う、と。

『戦争』を、するのだと。

平和の為、人類の為、と言葉巧みに語られてはいても、その裏に隠された本音はコーディネーターが先導して、全人類を巻き込んだ戦争をするのだと。

今、議長は宣言したのだ。

急に顔色が青ざめたアスランにルナマリアが声を掛けようとしたが、アスランはそれすら耳には届かず、ふら、とブリーフィングルームから出ていった。



群衆はまだ議長の演説に酔い痴れ騒めいている。
シンも同じで、議長の言葉を聞き、やはり自分は間違っていないと、そう強く感じていた。
ぎゅ、と拳を握り締め、会見が終わり何も映さなくなった画面を食い入るように見つめながら、心に誓う。

誰が何と云おうと、アレは俺が、倒すのだと。
憎しみに突き動かされ、悲痛なまでに願った事はは今議長によって正当化されたのだった。

そんなシンとは対照的に、隣で演説を聞いていたレイは、『宣言』に同意しているシンと、愕然として何処かへと立ち去ったアスランをこそ、と交互に見つめていた。

これから自分の、議長と自分の未来に必要な者は、彼等の願う世界に必要なのはどちらなのか。




まるで見定めるが如く。
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永遠のパズル 9 と 10
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/04[ Tue ] 23:09
永遠のパズル 9 と 10 をR18裏にUP致しました。

今回本当に、鬼畜です。ええ、もう、手を抜かず、ばっちり鬼畜ですorz。

というか、壊れておりますが何か?(何がって、二人ともさ)。

その編覚悟の上、御覧下さい…。


お、怒らないでね…。

でもコレで再び二人の関係が動きますです。でもってついに次はキラ撃墜のくだりに突入…。

うへえ。試練は続く…。

あ。今週はこの続きに集中します。ここでさっさと進めないと後が詰まってるからorz。ある程度UPできたら今度は幸せなのUPしたいよ。
目標はキラ撃墜まで。それで一応終わるんだ。このタイトルでは。

きっついなあ…。色々つじつま合わせないといけないから…。
Category [ 時系列(No.03)【永遠のパズル】 ]
永遠のパズル 7 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/03[ Mon ] 23:25

はあはあ、と。息が切れる。
疲弊しきった身体を無理にせかしてアスランは走った。気持ちが急げと身体を急かす。

早く、早くと。

食が細くなり、明らかに体力が減った身体がふらついて、何度もよろめきながらもアスランはシンの元へと駆けていた。



漸く辿り着いたシンの部屋の前で、アスランは息苦しさも忘れて壁のタッチパネルに触れた。ボタンを操作して慣れた手つきで内部へとインターフォンを繋ぎ、室内に居るであろう彼の人の名を呼ぶ。

「…っ、シン…っ。居るんだろ…シンッ」

ルナマリアの話ではレイも中に居る筈だ。しかし今のアスランの頭にはシンの事でいっぱいで。途切れがちの息にのせて何度も彼の名を呼ぶ。

「…アスラン、何の用でしょうか?」

やがて開かれたドアの向こうから姿を表したのは、レイだった。落ち着いた、というには余りにも冷たい口調で、金の髪から覗くアクアマリンの眸がアスランを捉えた。
「…ぁ、レイ…。シンは、居るか?」
彼が出てくる事を予想はしていたけれど、しかしいざ出てこられると困る。
アスランにとって彼は何となく近寄りがたい『何か』があって、正直部下として接触しにくい一面を感じていたからだ。
それが何か、は今はまだ識るべき時ではなかったが。
「シンなら中に居ますよ。…シン、アスランが来たが、通していいか?」
レイはふい、と視線を部屋の奥に向け、室内に居るらしいシンへと問い掛けた。
「………あぁ」
直ぐさま聞こえてきたシンの声にアスランは、はっとする。

何も感情が込められていない、声音。明らかに『アスラン・ザラ』には興味はないと、その声音が告げていてひどく胸が痛む。

夢中で駆けてきたが、彼には決別の言葉を投げ付けられ、しかし未だに身体を蹂躙され続けている。その事を思い出してアスランは一瞬躊躇したが、何とか心を奮い立たせた。今でなければ、と自分に言い聞かせて。
「…どうぞ」
シンの同意に漸くレイがドアから退いて部屋の中へとアスランを通した。一歩足を踏み入れた室内は、薄暗い空間だった。人工照明を最小まで落とした中で、シンは壁側に設置されたデスクに向かっていて。視線を目の前に置かれたノートパソコンの画面から逸らす事なく、指でカーソルを叩き続けていた。カタカタ、と音を鳴らしてシンの指は軽快にカーソルを叩き、その度に画面が点滅する。

その光に照らされた彼の顔を見てアスランは言葉を失う。


これ、は誰、だ。
この、人間は、知らない。
俺の識る、『シン』では、ない。


「………っ」

ごくり、と息を飲む。
室内に入ってきたアスランに一切視線を向ける事無くノートパソコンに向かってひたすら何かをしている彼は、アスランの知らない表情をしていて。ぞくり、と背筋に悪寒が走る。

「…シ、ン」
絞りだすように呼んだ彼の名にも反応を見せず、その紅い眸はまがまがしい色彩を色濃く映して画面の中の『何か』を凝視している。触れると以外と柔らかい黒髪も、きり、と引き締められた唇も、今は何故かひどく冷ややかな印象を与えるばかりで。
「アスラン、どうしました?。シンに何か用があったのでしょう」
呆然と立ち尽くすアスランに背後からレイの言葉が突き刺さる。その冷たい声音に僅かに反応し、アスランは漸く此処へ来た目的を、思い出した。
「シ、ン…、話が、ある…」
震える声音で、目の前の知らない彼、に呼び掛けるも。やはり見向きもされない。
「シン、頼む。…話を聞いて、くれ」
そう云った途端、ダンッ、とシンのカーソルを操る手が、ノートパソコンの横のデスク上を叩いた。
力任せに叩きつけられたその音に、アスランはびくりと肩を震わせる。
「っああ、もぅッ!!。また駄目だっ!!」
画面上の『何か』を憎らしげに睨み付けながらシンが叫んだ。その迫力に、ついアスランも視線を彼から画面へと向ける。

その先には。

『フリーダム』。

仮想空間の戦場に、それ、が居た。

「………ッ!!」

ああ、やはり、と。アスランの予感は、外れてほしいと願った直感は、当たっていた。
「シンっ、お前、何をしている…ッ!?」
途端にアスランを支配していた恐怖や自分の知らない彼への疎外感など吹き飛んで、怒鳴りつけていた。
「アスラン」
相変わらず平静なレイの呼び掛けも鼓膜を通らない。
「…っ、シン!?」
もう一度名前を呼ぶと、漸く彼の視線がアスランを捉える。

その凍り付いたような、熱を感じない紅の眸が薄暗闇の中で、ぎらりと輝く。

Category [ 時系列(No.03)【永遠のパズル】 ]
永遠のパズル 8 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/10/03[ Mon ] 23:23
「煩いんだよ、さっきから。静かに出来ないんなら出ていってくれない?」

眸に浮かんだ怒りとは対極の、抑揚のない声。

「シン、お前まさか…っ」
しかしアスランもその迫力に怯んでなどいられなかった。かつてシン達に見せていた、『フリーダム』に墜とされる前の『戦士』の顔を知らず取り戻したかのように彼に対峙する。
「まさか、って何の事ですか?」
「っ、ふざけるなっ!。お前、それ、のシュミレーションをして、どうする気だッ!?」
画面を指差してアスランが激昂すると、シンはそれまでの無表情からくい、と唇の端をあげて俄かに微笑った。

「判りませんか?」

そう云って、今度は笑った。愉しそうに、狂気の笑顔を浮かべた。

「…『フリーダム』を倒すんですよ」

はっきりと言い切ってシンは椅子から離れ、アスランの目の前に立つ。

「あんたを負かして、ステラを殺した、『フリーダム』を、俺が倒すんですよ」

シンの言葉にアスランは視界が歪みそうになって、何も考えられなくなった。激情にかられてシンの胸元をぐっ、と掴むと冷静さを完全に見失ったまま叫んだ。

「何故!?。お前があいつを、『フリーダム』を、何故!?」
「あんたこそ何云ってんですか!。あれは『敵』だっ。俺達ザフトの『敵』だ!!。『敵』なら倒すのが当たり前だろ!?」
「違うッ!!。いつアレが俺達を撃ち落として殺した!?。キラは…っ、あいつは…っ、誰も殺していない!!。争いをなくそうとしているだけだッ」

「………しかし、目的がどうであれ、戦場を混乱させている事は、紛れもない事実です」

激情に流されてお互いの意見をぶつけあう二人の姿を、一歩離れた後ろで監視するかのように静かに見ていたレイが冷淡な言葉を投げ掛けた。それに、シンもアスランもはっ、とする。

「………違いますか?。アスラン」
「………っ、そ、れは………」

レイの発言にアスランは何も言い返せない。彼の言葉は己も思っていた事だ。

だが。それでも。

「………っ、確かに、そうかもしれない…っ。だがっ!。彼等はお互いが殺し合う事を止めようと………っ」
「じゃあなんで、あんたはアレに墜とされたんだ!。仲間だったんだろ!?。同じ事思って戦ってたんだろ!?。それなのにあんたはアレに撃墜されただろッ!!」
必死に空回りそうになる思考を振り絞って吐いた言葉を、シンの怒声が断ち切った。

「撃墜されたあんたがどう思おうと、『フリーダム』は『敵』だ!!」

シンの言葉に、アスランは愕然とする。掴んでいたシンの胸ぐらから、ずる、と手を滑り落として只立ち竦む。

「シンの云う通り、アレは今我らの敵です。想いがなんであれ、戦場を混乱させ、時には悪化させる。争いをなくそうと、プラントを守ろうとする議長率いる我らザフトの行く先を阻む。それを敵と云わず、何と呼ぶのです?。」

レイの声が更にアスランを凍り付かせていく。

「今、ミネルバでアレに立ち向かえるのはシンだけです。かつて仲間であっても、駆るべき機体を持たぬ貴方ではない。ならばシンがアレを倒す為にシュミレーションをするのは至極当然の事」

レイの口調が、アスランの記憶に眠る『誰か』を彷彿とされるも、今のアスランにはそれすら判らない。

「違いますか?。アスラン」

アスランの背中ごしにレイのアイスブルーの眸がぎらり、と光る。
「………っ」
完全にアスランは何も云えなくなった。先程までの気迫を失い、只ぼんやりと俯いて自分の足元を見ていた。
「負けたあんたが、今更口出しする事じゃないんだよ」
そう云ってシンが力を失ったアスランの腰を、ぐい、と掴み寄せた。そして力任せに壁に叩きつける。
「…っ、ぐ…うっ」
背中に走った激痛にアスランが眉をしかめ、そのまま壁伝いに座りこんだ。
「負け犬のくせに、偉そうな事云うなよ」
「っあ、うッ!!」
逃げ場を与えず、シンがアスランの手をブーツで踏み付け、立ちはだかる。

「シ、ン…っ」

まさか、とアスランはシンを見上げた。視界に映るシンは、物凄い形相でアスランを睨んでいて。一瞬にして恐怖が沸き起こる。

「…っ、ゃ…めろ」
絞りだした声音は、震えていた。
しかしアスランの制止をシンは無視して、彼の軍服の合わせを、びり、と剥いだ。

「シンッ!!」

まさか。今此処には、レイも、居るのに。
ふい、と視線をレイに向けると、彼はひどく冷めた眼でアスランを見下していて。今シンにされようとしている事も理解している表情で、アスランを下等のイキモノとして見下していて。

「シン、俺は暫らく格納庫に行って機体の整備ログを見てくる」
「ああ」
「シンッ!、…っ、頼む、レイも、こいつを止めてくれ…っ」

救いを求めたアスランの声に返ってきたのは。

「戦えなくなった貴方に、シンを拒む権利は、ない」

と。そして。

「シン、余りひどく痛め付けるな。艦長に知られると厄介だ。やるなら軍服に隠れるように、巧くやれ」
「ああ、判ってるさ」

全てを黙認する態度を示して、無常にも部屋から出ていった。




シンがこれからしようとしている事よりも、レイに突き付けられた言葉と彼等の中で完全に『堕落した英雄』となった自分の立場に、アスランは絶望した。
Category [ 時系列(No.03)【永遠のパズル】 ]
永遠のパズル 6 (#33~34)
TB[ - ]  CM[ 0 ]   Edit   2005/09/29[ Thu ] 23:03

ベッドに突っ伏して暫らく思考を巡らせて。一体どれ位の時間を過ごしていたのか。

ふ、と我に返った時、アスランを呼ぶ声が壁に設置されたインターフォンから聞こえていた。
ぼんやりと視線を向けるとインターフォンの横に埋め込まれたモニターに見知った少女が映っている。
『アスラン』
ルナマリアだった。何度も呼び掛けていたらしい彼女の表情は、返答がない事に不安げだった。
散らばらせていた思考を掻き集めてアスランは、いつもの、彼女達に見せる『アスラン・ザラ』の顔に戻すと、インターフォン越しのルナマリアに答えた。
「…ああ、どうした?」
『よかった、いらっしゃったんですね』
「何か用でも?」
『ぁ、いえ…そろそろ食事の時間ですから、一緒にどうか、と思って…』
少し冷たい受け答えをしてしまったかとアスランは一瞬躊躇ったが、ドアの向こうの彼女はさして気にする訳でもなく。
『行きましょう、アスラン』
少々強引かと思えるような口調で誘い出す。そんな挑発的な態度は今に始まった事ではない。然程腹が空いた訳ではないが、先日も誘いを断ったばかりだ。これも付き合いかと思い直してアスランはドアを開けた。



メニューは少ないものの、簡単なバイキング形式の食堂でアスランはルナマリアに連れられて食事をとろうと空いたテーブル席についた。食事を取るには少し遅い時間だったからか、辺りに人影は殆どなく、数人しか居なかった。
アスランの向かいに座ったルナマリアがちら、と彼の選んだメニューを見やる。トレイに乗せられたそれらは余りにも量が少なかった。
「アスラン、それで足りるんですか?」
「え?、ああ。然程空いてないからな…」
そう云いながらアスランはフォークを手に取りボゥルの中に盛り付けられた野菜を突く。本当に食欲がないのか、その動きはかったるそうに思える。
「でも、最近殆ど食べてないでしょう?」
ルナマリアが聞いてきた。一瞬、アスランのフォークを動かす手が止まる。
「え?…あぁ、いや…」
「この間も部屋から出てこないで…心配したんですからね」

誤魔化そうとした時、彼女の言葉にアスランを取り巻く空気が、凍り付く。

それ、は、あの悪夢のような。
シンに、犯され、汚された、日の事。

鮮明に記憶が甦ってくる。
震えそうになる手を必死で抑えて、アスランは努めて冷静を装って言葉を返そうとした。しかし、喉が張りついたようで、何も云えなくて。
そんなアスランの様子にルナマリアはやはり、といった表情をしてみせた。

「…何か、あったんですか?、あの日…」

おかしいとは思っていた。『セイバー』を撃墜された日からアスランの様子が明らかに以前とは違っていたし、その上シンとも一時期は和やかな雰囲気を保っていたのが急に不安定なものになっていったからだ。
シンのひどい変わり様も気になっていたが、ルナマリアにはそれとアスランの異変に直結する事はまだこの時点では判らなかったけれど。
しかしいきなり核心を突かれてアスランの顔色は一気に青ざめた。普段ならば絶対に見せない上司のそんな様子に、逆にルナマリアが慌ててしまう。
「と、とにかく…ちゃんと食べないと駄目ですよ…アスラン」
何とか言葉を繕ってみせるとアスランも漸く停止していた思考が回り始めた。
「…ぁ、ああ…すまない…」
何とか絞りだしたその声は、語尾が消え入りそうな程切なく聞こえた。

アスラン自身元からそんなに食べる方ではなかったが、確かにあの日以来更に食が細くなっていたのは自覚している。
友に墜とされ、彼に汚されたあの日から、精神的にも肉体的にも追い詰められ、ショックと疲労で丸二日は何も喉を通らなかったし、漸く食べられるようになった今でもつまむ程度しか食べられない。
その上シンに犯され散らされた部位がろくに手当ても出来ないままに癒える事なく今も犯される為に完全に熱を持っていて化膿している。その為身体も怠く感じられた。

でも、この事実だけは知られてはならないから。
アスランは必死に微笑みを浮かべた。

「…大丈夫、だから…心配しなくていい」

そう云って、微笑う。

その痛ましい微笑みに、ルナマリアは何も云えなくなった。

どうして。この人は、こんな風に笑う人だったろうか。
こんな、怯えるような小さい存在だったろうか。
こんなにも、細く見える人だった?。

今ルナマリアの眸に映るアスランは、とてもはかなくて。
泣きそうになった。

「………は、い」
堪えて俯くとアスランがまた、はかなく微笑う。

その後は二人、無言だった。黙々と手を動かしてそれぞれのトレイのものを食す。
やがて食事を終えて席を立ったアスランに未だ席についたままのルナマリアが上目遣いで見上げて云った。

「………そういえば」
「何だ?」
話し掛けておいて言い淀む彼女に対しアスランはその先を促す。
「デストロイ戦から戻ってきてから………シン、部屋に籠もったままだそうです…レイと二人で」
また、アスランが動揺を見せたが、彼女は躊躇いながらも云い続けた。
だって、これだけは云わなければ、と。必死にそう考えて。
だって、これはアスランにも、否、アスランだからこそ云わなければ、と。

「ずっと…シュミレーション、してるみたい…です。『フリーダム』の戦い方を………」

その言葉が鼓膜に伝わった瞬間、アスランは眸を大きく見開いて手に持っていたトレイを乱暴にテーブルに置き、突然人が変わったかのように走りだしていた。
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