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2010/02/14[ Sun ] 22:52
シンの所在を尋ねた瞬間、その場に居合わせた者の間に微妙な空気が流れた。鈍感だの何だのと、散々周囲に云われてきたアスランですら気付く位には、不自然な空気だった。
いつも一緒に居ると思っていた。アカデミーでの苦楽を共に過ごし、同期としてこの戦艦に乗り込んだ仲間だ。仲が良いのは当然だし、だからこそ常に一緒にいる先入観がアスランにはあったのだ。
だが、シンは今此処には居ない。
それが何故か無性に気になった。
「あの……シンは……」
すると、メイリンがアスランの問いに答えようとして。
「メイリン!」
「…………っ」
けれど姉の様子を伺い見るや、結局肝心な事には触れずに途中で黙る。シンの名が出た途端、急にルナマリアが不機嫌になったからである。
姉の怒りを買わぬよう答えを躊躇するメイリン。何故其処で躊躇うのか、言えぬ訳でもあるのだろうか。やはりアスランには全く見当がつかなかった。
「何かあったのか?」
「アイツ急に機嫌悪くなったんですよ!」
二人の様子がおかしいと、アスランが尋ねた途端、即座にルナマリアが大声を上げた。
「ルナマリア?」
「お姉ちゃん……!」
その剣幕に、アスランが怪訝な顔を、メイリンが困惑の顔を各々向けた。
「クリスマスの思い出を皆と話してたから、私はただシンにも聞いただけなのに!アイツってば聞いた早々いきなり怒鳴ったんですよ?私何も悪い事言ってないのに!凄くムカつきません?」
余程シンは怒ったのだろう。ルナマリアの様子からして察する事は出来た。アスランにさえ食ってかかるようなルナマリアの物言いに、一瞬たじろぎそうになる。が、何故シンが怒ったのかまでは、勿論アスランにだって判らない。しかし、ルナマリアの言葉がシンの感情を揺さぶり、そしてその怒りが此処に居ない理由なのだろう。
「……それで、シンは何処に?」
どうして尋ねたのか自分でも不思議だった。ただ何となく気になっただけなのかもしれない。常日頃不機嫌の塊のような彼だ、いつもその調子ではいざという時に困る、と上官として判断したのかもしれない。
しかし、ルナマリアから返ってきた答えは、ある意味予想通りのものだった。
「知らないですよ、あんな奴!」
「お姉ちゃんってば……あ、あの、多分部屋に戻ったんだと思います……」
只でさえ機嫌の悪いルナマリアは、シンの居所を聞かれて更に怒り心頭のようだ。そっぽを向いた姉の代わりに、妹が小声で答えてくれた。
「そうか、ありがとう」
「行くんですか?隊長!」
「ああ、放っておく訳にいかないだろう。もし今戦闘になっても冷静さを欠いてしまえば、命に関わるからな」
憤るルナマリアに、最もらしい正論を言い残し、アスランはその場を後にした。
ルナマリアに言った事は確かに間違ってはいない。血気盛んなシンは、パイロットの中で一番危険なタイプだからだ。そう思っているから、アスランは普段からメディカル面も気にはかけている。
けれど、だからといってシンの機嫌が良くなるという自信は、ない。却って悪化させる可能性だってある。宥めようとして、これまでにも幾度かシンを激怒させた。シンが短気過ぎるのと、自分が口下手過ぎるのがいけない、とアスランは捉えていたが。
だからまた今も怒らせるかもしれない。それでもこうしてシンの部屋に向かっているのは、ただ何となく気になったからだった。
「シン、居るか?」
ドアの前に立ち、中に居るであろうシンを呼ぶ。思っていた通り、返事はない。もう一度呼んで、それでも反応がなければ立ち去ろうと思っていた。相手が話をする気がないのなら、アスランにはどうする事も出来ないし、無理強いするのも良くないと判断したのだ。
「話があるんだが……シン?」
否、そこまでしてやる義理もないからかもしれない。所詮気紛れなのだから、この訪問は。
「…………」
しかし、ドアは開いた。アスランの予想に反して。
「……何の用ですか」
開かれた扉の向こうに居たのは。
「話って……また説教ですか?」
薄暗い室内を背に、酷く沈んだ表情をした、シン。
「説教だったら今聞く気分じゃないんで、後にしてくれませんか?」
これまで見てきたシンとは全くの別人のように見えて。
なんという顔をしているんだ、お前は。
単なる喧嘩じゃなかったのか。友達同士のいさかいだろう。
なのに、何故。
そんな、死にそうな顔をしているんだ、シン。
余りにも沈痛なシンの佇まいに、アスランは一瞬かける言葉を失った。
いつも一緒に居ると思っていた。アカデミーでの苦楽を共に過ごし、同期としてこの戦艦に乗り込んだ仲間だ。仲が良いのは当然だし、だからこそ常に一緒にいる先入観がアスランにはあったのだ。
だが、シンは今此処には居ない。
それが何故か無性に気になった。
「あの……シンは……」
すると、メイリンがアスランの問いに答えようとして。
「メイリン!」
「…………っ」
けれど姉の様子を伺い見るや、結局肝心な事には触れずに途中で黙る。シンの名が出た途端、急にルナマリアが不機嫌になったからである。
姉の怒りを買わぬよう答えを躊躇するメイリン。何故其処で躊躇うのか、言えぬ訳でもあるのだろうか。やはりアスランには全く見当がつかなかった。
「何かあったのか?」
「アイツ急に機嫌悪くなったんですよ!」
二人の様子がおかしいと、アスランが尋ねた途端、即座にルナマリアが大声を上げた。
「ルナマリア?」
「お姉ちゃん……!」
その剣幕に、アスランが怪訝な顔を、メイリンが困惑の顔を各々向けた。
「クリスマスの思い出を皆と話してたから、私はただシンにも聞いただけなのに!アイツってば聞いた早々いきなり怒鳴ったんですよ?私何も悪い事言ってないのに!凄くムカつきません?」
余程シンは怒ったのだろう。ルナマリアの様子からして察する事は出来た。アスランにさえ食ってかかるようなルナマリアの物言いに、一瞬たじろぎそうになる。が、何故シンが怒ったのかまでは、勿論アスランにだって判らない。しかし、ルナマリアの言葉がシンの感情を揺さぶり、そしてその怒りが此処に居ない理由なのだろう。
「……それで、シンは何処に?」
どうして尋ねたのか自分でも不思議だった。ただ何となく気になっただけなのかもしれない。常日頃不機嫌の塊のような彼だ、いつもその調子ではいざという時に困る、と上官として判断したのかもしれない。
しかし、ルナマリアから返ってきた答えは、ある意味予想通りのものだった。
「知らないですよ、あんな奴!」
「お姉ちゃんってば……あ、あの、多分部屋に戻ったんだと思います……」
只でさえ機嫌の悪いルナマリアは、シンの居所を聞かれて更に怒り心頭のようだ。そっぽを向いた姉の代わりに、妹が小声で答えてくれた。
「そうか、ありがとう」
「行くんですか?隊長!」
「ああ、放っておく訳にいかないだろう。もし今戦闘になっても冷静さを欠いてしまえば、命に関わるからな」
憤るルナマリアに、最もらしい正論を言い残し、アスランはその場を後にした。
ルナマリアに言った事は確かに間違ってはいない。血気盛んなシンは、パイロットの中で一番危険なタイプだからだ。そう思っているから、アスランは普段からメディカル面も気にはかけている。
けれど、だからといってシンの機嫌が良くなるという自信は、ない。却って悪化させる可能性だってある。宥めようとして、これまでにも幾度かシンを激怒させた。シンが短気過ぎるのと、自分が口下手過ぎるのがいけない、とアスランは捉えていたが。
だからまた今も怒らせるかもしれない。それでもこうしてシンの部屋に向かっているのは、ただ何となく気になったからだった。
「シン、居るか?」
ドアの前に立ち、中に居るであろうシンを呼ぶ。思っていた通り、返事はない。もう一度呼んで、それでも反応がなければ立ち去ろうと思っていた。相手が話をする気がないのなら、アスランにはどうする事も出来ないし、無理強いするのも良くないと判断したのだ。
「話があるんだが……シン?」
否、そこまでしてやる義理もないからかもしれない。所詮気紛れなのだから、この訪問は。
「…………」
しかし、ドアは開いた。アスランの予想に反して。
「……何の用ですか」
開かれた扉の向こうに居たのは。
「話って……また説教ですか?」
薄暗い室内を背に、酷く沈んだ表情をした、シン。
「説教だったら今聞く気分じゃないんで、後にしてくれませんか?」
これまで見てきたシンとは全くの別人のように見えて。
なんという顔をしているんだ、お前は。
単なる喧嘩じゃなかったのか。友達同士のいさかいだろう。
なのに、何故。
そんな、死にそうな顔をしているんだ、シン。
余りにも沈痛なシンの佇まいに、アスランは一瞬かける言葉を失った。
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[ SS ノーマル・CP ]