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管理人ひさこによるガンダムSEED DESTINY及び蒼穹のファフナーのファンサイトブログです。オフィシャル等とは一切関連はございません。
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【Only one promise】02
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2010/02/14[ Sun ] 22:52
シンの所在を尋ねた瞬間、その場に居合わせた者の間に微妙な空気が流れた。鈍感だの何だのと、散々周囲に云われてきたアスランですら気付く位には、不自然な空気だった。

いつも一緒に居ると思っていた。アカデミーでの苦楽を共に過ごし、同期としてこの戦艦に乗り込んだ仲間だ。仲が良いのは当然だし、だからこそ常に一緒にいる先入観がアスランにはあったのだ。

だが、シンは今此処には居ない。
それが何故か無性に気になった。

「あの……シンは……」
すると、メイリンがアスランの問いに答えようとして。
「メイリン!」
「…………っ」
けれど姉の様子を伺い見るや、結局肝心な事には触れずに途中で黙る。シンの名が出た途端、急にルナマリアが不機嫌になったからである。
姉の怒りを買わぬよう答えを躊躇するメイリン。何故其処で躊躇うのか、言えぬ訳でもあるのだろうか。やはりアスランには全く見当がつかなかった。
「何かあったのか?」
「アイツ急に機嫌悪くなったんですよ!」
二人の様子がおかしいと、アスランが尋ねた途端、即座にルナマリアが大声を上げた。
「ルナマリア?」
「お姉ちゃん……!」
その剣幕に、アスランが怪訝な顔を、メイリンが困惑の顔を各々向けた。
「クリスマスの思い出を皆と話してたから、私はただシンにも聞いただけなのに!アイツってば聞いた早々いきなり怒鳴ったんですよ?私何も悪い事言ってないのに!凄くムカつきません?」
余程シンは怒ったのだろう。ルナマリアの様子からして察する事は出来た。アスランにさえ食ってかかるようなルナマリアの物言いに、一瞬たじろぎそうになる。が、何故シンが怒ったのかまでは、勿論アスランにだって判らない。しかし、ルナマリアの言葉がシンの感情を揺さぶり、そしてその怒りが此処に居ない理由なのだろう。
「……それで、シンは何処に?」
どうして尋ねたのか自分でも不思議だった。ただ何となく気になっただけなのかもしれない。常日頃不機嫌の塊のような彼だ、いつもその調子ではいざという時に困る、と上官として判断したのかもしれない。
しかし、ルナマリアから返ってきた答えは、ある意味予想通りのものだった。
「知らないですよ、あんな奴!」
「お姉ちゃんってば……あ、あの、多分部屋に戻ったんだと思います……」
只でさえ機嫌の悪いルナマリアは、シンの居所を聞かれて更に怒り心頭のようだ。そっぽを向いた姉の代わりに、妹が小声で答えてくれた。
「そうか、ありがとう」
「行くんですか?隊長!」
「ああ、放っておく訳にいかないだろう。もし今戦闘になっても冷静さを欠いてしまえば、命に関わるからな」
憤るルナマリアに、最もらしい正論を言い残し、アスランはその場を後にした。





ルナマリアに言った事は確かに間違ってはいない。血気盛んなシンは、パイロットの中で一番危険なタイプだからだ。そう思っているから、アスランは普段からメディカル面も気にはかけている。
けれど、だからといってシンの機嫌が良くなるという自信は、ない。却って悪化させる可能性だってある。宥めようとして、これまでにも幾度かシンを激怒させた。シンが短気過ぎるのと、自分が口下手過ぎるのがいけない、とアスランは捉えていたが。
だからまた今も怒らせるかもしれない。それでもこうしてシンの部屋に向かっているのは、ただ何となく気になったからだった。



「シン、居るか?」
ドアの前に立ち、中に居るであろうシンを呼ぶ。思っていた通り、返事はない。もう一度呼んで、それでも反応がなければ立ち去ろうと思っていた。相手が話をする気がないのなら、アスランにはどうする事も出来ないし、無理強いするのも良くないと判断したのだ。
「話があるんだが……シン?」
否、そこまでしてやる義理もないからかもしれない。所詮気紛れなのだから、この訪問は。
「…………」
しかし、ドアは開いた。アスランの予想に反して。
「……何の用ですか」
開かれた扉の向こうに居たのは。
「話って……また説教ですか?」
薄暗い室内を背に、酷く沈んだ表情をした、シン。
「説教だったら今聞く気分じゃないんで、後にしてくれませんか?」
これまで見てきたシンとは全くの別人のように見えて。


なんという顔をしているんだ、お前は。
単なる喧嘩じゃなかったのか。友達同士のいさかいだろう。
なのに、何故。

そんな、死にそうな顔をしているんだ、シン。


余りにも沈痛なシンの佇まいに、アスランは一瞬かける言葉を失った。



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【Only one promise】01
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2009/12/14[ Mon ] 00:39
それはアスランにとって些細な事で、特に深い意味なんかなかった。






今、アスランが居るのは、地球上の大海原を航海している巨大な戦艦の中だ。見慣れたオーブの景色も、打ち解けた仲間達も、無い。一から信頼関係を築かねばならない初対面の人々と共に、見渡す限り障害物など何もない海上を宛てもなく漂流している現状だ。
此処に来るまでに色々あったな、とか、オーブに居る彼等はどうしているか、とか、今のアスランには思慮する余裕は無かった。
それもその筈、今は再び始まってしまった戦争の最中で、アスランもまた一人の戦士として存在しているのだ、このミネルバの中で。
本部からの命令は現状待機、つまりこの海原を漂っていろ、との事だ。身を隠す物などない場所では、少しの油断も命取りになる。今後の進路において手を打っておくべきだと、アスランはグラディス艦長に呼ばれ、対策を話し合ってきた。

ある意味目的のない作戦会議を終え、自室に戻る帰り道、アスランは偶々食堂の前を通過した。
「……で、メイリンがね」
「やだ、云わないでよ!お姉ちゃん!」
その際聴こえてきたのは、部下達の賑やかな声だった。女性特有の高い声音は、察する事もなくルナマリアとメイリンの姉妹だと直ぐに判った。
「…………」
聞くつもりはなくとも、廊下に居るアスランにも会話が聞こえてくる。
「プレゼントの箱を開けた途端に泣き出したのよ、この子ってば」
「お姉ちゃん!」
「自分で欲しいって頼んでおいて、違う色が良かったとか我が儘言ったの!」
「メイリンらしいなー」
「もう、ヨウランの馬鹿っ!」
食堂に集った彼等は皆まだ年若く、アカデミーでの学生気分が抜けきっていないらしく、時折こうして騒いでいる事がある。初めて戦艦に乗ったからか、それとも戦争の実感がまた無いのか。幾多の経験をしてきたアスランは、常に気を引き締めろ、と注意したくなる時がある。その反面、経験少ない彼等にはまだ息抜きは必要なのだ、と半ば諦めてもいる。
今だって何処に向かえば良いのか判らない状況だ、アスランですら不安になるのだから、この場は見なかった事にしよう、と。そう考え、そのまま食堂を通過しようとしたのだが。
「あ、隊長ー!」
呼び止められてしまった、彼等の中で一番騒いでいたルナマリアに。
「……やあ、ルナマリア」
内心、しまった、と。心の中で密かに舌打ちする。
「今皆で食事していたんです。隊長も一緒にどうですか?」
正直言って、アスランはルナマリアを苦手としていた。悪い子じゃない、でも、少し強引過ぎる。此方の都合などお構い無しに、連れ回されるような、そんな印象を持っていたからである。
だいたい今はそれどころじゃない。早く部屋に戻りたい。
「いや、俺は……」
「えー、いいじゃないですか、たまには!」
「しかし……その……」
ルナマリアからのお茶の誘いをどう断ろうかと、言葉を濁した時。
「…………?」
不意にアスランは彼等の中に一人足りない事に気付いた。
「隊長ってば、いつもそうやって誤魔化して逃げちゃうんですもん、今日こそは付き合ってもらいますから!」
「あ、おい、ルナマリアッ」
ほんの僅かな隙をつかれて、アスランは呆気なくルナマリアに捕まった。
「ルナマリア、腕を放すんだ」
「そんなこと言わずに、ほらこっちにどうぞ!」
強引に腕を組まされ、そのままズルズルとルナマリアに引きずられて、アスランは彼等の輪の中に招待されてしまったのだった。

予測出来る限りの不慮の事態に備えて、シミュレーションをしておきたい、とは結局云えなかった。



「隊長はどうだったんですか?」
無理矢理着席させられるなり、ルナマリアが尋ねてきた。どんなにアスランが逃げたくとも、目の前に彼等のリーダー格のルナマリアが居ては、脱出は不可能である。その上いきなり質問されても、今来たばかりのアスランに話の脈絡が判る筈もない。
「え……?」
何が何やら、さっぱり判らないでいると、ルナマリアの陰からメイリンが説明してくれた。
「あの……今皆でクリスマスの話をしていたんです……」
姉と違ってやや引っ込み思案なのか、メイリンはアスランの前ではいつもおどおどと話している。
「子供の頃ってよく集まってクリスマス会とかやるじゃないですか、そういう思い出って隊長にもありますよね?」
是非とも教えてくれと言わんばかりに、ルナマリアが身を乗り出して聞いてきた。これはもう、答えなければ絶対に此所から帰してもらえないだろう。そんな予感がしつつ、アスランは自分の中の記憶を遡ってみる。
「小さい頃から父は多忙で家に居ない事が多かったし、母も研究所にこもりきりだったから……」
「え……じゃあクリスマスは……」
アスランの言葉を聞いて、急にルナマリアが静まった。何を想像したのか、声音で直ぐに判断できた。
「いや、月に居た頃は友達の家で一緒に過ごしていたよ」
そう言うと、案の定ルナマリアの表情が明るくなる。アスランの話を聞いて、また皆で口々に思い出を語り出した。


確かに間違いじゃない、クリスマスはいつも、友達の、キラ、と過ごしていた。
親友だったキラと、いつも優しかったキラの母親と、遅くになってから合流してくれた、……母さんと。
父さん……は居なかった。クリスマスを一緒に過ごした記憶が、無かった。
子供の頃から不在がちで、月とプラントで離れて暮らして、また元に戻っても家には余り居なくて。

そうして…………あの、血のバレンタインがきて、以来クリスマスの思い出は途絶えた。


家族で過ごした記憶は、無かった。



その事実を今更ながら思い出して、そうしてアスランは不意にある事をルナマリアに聞いた。
さっき感じた違和感。此処に居ない存在。仲間なのに、何故か姿が見えない、いつも一緒に居るとばかり思っていたのに、と。

「ルナマリア、シンはどうした?」

家族、というキーワードが、今この場に居ない少年の事をアスランに連想させたのだった。
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【フェイス】06
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2009/01/04[ Sun ] 23:37
「シ、ン……?」

突然見せられたシンの涙に、アスランは目を疑った。
「アンタに会いたいって……俺、何度も言いましたよね?」
泣きながらも語るシンの目に、ジワジワと涙が滲んでは溢れて頬を濡らす。
「何で判ってくれないんですかぁ……ッ」
その一言一言が、まるでアスランを責めるようにシンの咽から絞り出される。
「アンタ……酷いよ……ッ!」
「…………」
何も言えなかった。言い訳も謝罪も、今のアスランには何も。
まさか、泣くとは思わなかったのだ。確かに二人逢うのは久しぶりだ。逢えて嬉しいと思うのはあっても、泣く理由がアスランには判らない。目の前で起きた突然の出来事にただただ戸惑うばかりである。
それでも少年の泣き顔は見たくない。シンの言う通り久しぶりの再会ならば尚更だ。涙の理由は判らなくとも、泣く様を見たくはないという気持ちが次第にアスランの中に芽生えてきて。
「シン……泣くな……」
そっと手を伸ばし、溢れる涙を拭いてやろうとして。けれど爪先が触れるか触れないかのところで、フイ、と顔を背けられ、シンに避けられた。
「……シン」
一瞬息を飲む。と同時に胸が痛んだ。首を振る、たったそれだけの動作が、こんなにも胸を締め付けるなんて。
「頼む、泣かないでくれ……」
「誰のせい、だと……思って、るんですか……っ」
しゃくりあげながらシンが自らの腕で涙を拭った。その仕草が酷く哀れに思えて。

気付かぬ内に、アスランはシンを抱き寄せていた。

震える背中を両腕で抱き寄せ、ぽふん、と頭を己の肩に押し付ける。
「……シン」
そうして、耳許で名を呼ぶ。たったそれだけの事なのに、何故だろうか。
とてつもなく緊張して、そして嬉しかった。

抱き締めたその感触に。
腕の中のシンの感触に。

ああ、そうか、と。

アスランはこの時やっと
判ったのだ。

会いたかったんだ、俺も。

仕事に没頭して多忙に駆け回って、今は会う時じゃないと思い込んで。そうやって自分を誤魔化していた。
今は恋愛よりも世界。その為に俺は此処に居る。
確かにその志は間違ってはいない。けれど根本的な事をアスランは判っていなかった。
誰かと付き合うというのは、時として己の支えになる。挫けそうな時には安らぎとなり、頑張ろうという時には活力源になる。例え遠く離れていても、自分は独りじゃないと勇気づけられる。
恋愛とはそういうものだ、決して己の利己欲の為に利用するものではない。
簡単だけれど難しい、他人との関わりあい。でも、だからこそ人は自分以外の誰かを求める。独りで生きていくのは寂しいから。
特にアスランもシンも、己以外の血の繋がりを喪っているから。

なのに、アスランは大好きなシンに淋しい想いをさせてしまった。

泣かせたくなかったのに、笑っていて欲しかったのに。

シンに会って、話をして、触れて、そして。

抱き締めたかった。
抱き締めて欲しかった。

何だ、俺も淋しかったんじゃないか。
シンに逢いたくて堪らなかったんじゃないか。

その証拠に、シンを離せない。


「シン、すまない……」
今まで邪険にしていた事、会える時間も会おうとしなかった事、シンの気持ちを判ってやれなかった事、それら全てに対してアスランが謝罪する。少しだけ抱く腕の力を強くして、ギュウ、とシンにしがみつく。
するとシンが強く抱き締められて苦しいのか、やや顔をしかめて呟いた。
「……痛いよ、馬鹿力」
「ああ、すまない……シン」
「…………」
腕の力を緩める代わりに、シンの黒髪に頬擦りして。
「本当にすまなかった……」
再度謝るアスランの腕の中で、シンはじっとしていた。さっき顔を背けたみたいに、腕を振り払って逃げない。それが有り難かった。
「アスラン……お願いがあります」
「何だ?俺に出来る事か?」
不意にシンがアスランへ声を掛けた。何事かと尋ねれば。
「アンタにしか出来ません」
と、シンは泣いて濡れた頬もそのままに言い切った。
「……ちょっとでもいいから、俺との時間作って下さい……」
それは切実な願いだった。何度も繰り返し頼んできた事だった。シンの願いは、今のアスランになら理解出来た。
「……判った」
だから頷いて、シンの眼をじっと見つめる。
「これからは俺からもお前に連絡する」
「絶対ですよっ」
「会うのは難しいが……」
「それは……我慢します」
それでも全く会えない訳じゃない、時間は掛かってもまたいつか会える。そう告げると、泣き顔だったシンが笑って。

「アスラン……ッ!」

強く、強く、抱き締め返された。

「アンタが好きです……ずっと、好き……!」

その告白に、その笑顔に、胸が震えた。


逢えて嬉しいだけじゃなくて、逢えて切ないという気持ちを、初めてアスランは知った。






「俺もう帰らなきゃ……」
「もうか?」
「何、淋しい?」
「馬鹿っ」
「え、図星?図星?」
「大人をからかうな!」
「アイタッ!」
暫く抱き合ってていると、不意にシンがプラントへの帰還を告げた。滞在と呼ぶには余りにも短い時間にアスランが聞き返せば、会えて余裕が出来たのかシンが子供っぽくからかってきて。そのいたずらっ子みたいな顔つきに、思わずドキリとする。赤面しそうになるのを誤魔化す為に、ついシンの頭を殴ってしまった。
「アンタっ、久しぶりに会ったのに殴りますか!」
シンが怒鳴る。ついさっきまで泣いていたのが、笑ったり怒ったり、コロコロと表情が変わって。

そうだ、お前の色んな顔を俺に見せてくれ。
俺だけしか知らない顔を、もっと。

「じゃあ、また」
「ああ、元気でな」
「戻ったら直ぐ連絡します」
「待ってるよ、シン」

言葉を直に交わし、間近で互いの顔を見つめて。

今はまた離れなきゃならないけれど、いつかまた逢えるから。

そう遠くはない未来で、必ず逢えるから。

「アスラン、大好きです!」


そう叫んだシンの顔は。



アスランの大好きな、シンの笑顔だった。
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【フェイス】05
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/12/28[ Sun ] 22:41
「シン、場所を変えよう……此所じゃ人が多すぎる」
不意にアスランが言い出した。その眼は傍のシンではなく周りの人々の様子を伺っていて、明らかに人目を気にしているのだと判った。
「じゃあ向こうに行きましょう。岬に続く遊歩道があったから」
「ああ、判った」
幾ら慰霊祭が終わったといっても、此所にはまだ人が沢山残っている。シンはそういった事には無頓着だが、アスランは流石に人がいる前では話し難いらしい。シンはアスランを連れて、人気の少ない遊歩道へと歩き出した。





「任務は大丈夫なのか?」
「休暇ぶん取ってきました」
「よく許可が出たな……キラは何も言わなかったのか?」
「別に。逆にニヤニヤ笑ってましたよ、アイツ」
「…………」
「多分面白がってるんでしょうね」
「相変わらずタチが悪いな……」
二人並んで歩きながら幾つか言葉を交わす。まだ周囲には見知らぬ人が大勢居たから、話す内容は当たり障りのない会話だった。普段モニター越しに話している内容と大差ないように思えるが、しかしアスランには何かが違っているように感じられた。それが何なのか、分かりそうでいて、分からない。あと少しで答えを見出だせそうな、もどかしい気分に陥りかけた時だった。
「アスラン……」
ふと、シンが小声でアスランの名を呼ぶ。チラリと隣を歩くアスランの顔色を伺って、触れそうな位近くにある手をそうっと近付けて。

いい?と、赤い眼が聞いている。

「…………」
いつの間にか周りには誰も居ない。目指す岬にはまだ距離はあるけれど、気づけば今この遊歩道にはシンとアスランしか居なくて。
「……いいぞ」
此所ならいいか、と。多少ならば分別わきまえない、それこそ恋人同士として振る舞っても平気……だろう、と。アスランなりに慎重に、けれど安易に許可を下した。

「……ッ、アスランッ!」

次の瞬間、アスランはシンの声を間近で聴かされる。

「会いたかった……!」

その近さに、その大きさに、驚くより早く、シンはアスランに抱き付いていた。
「お、おいっ」
「アスラン……やっと会えた……ッ!」
「シ、ン……」
抱擁が突然過ぎて慌てるアスランを、両手いっぱいで抱き締めるシンの腕に、更に力が込められる。
「ずっと会いたくて、こうしたくって……っ」
少年の、華奢だと思っていた腕の、抱き締める力の強さに再度驚かされて。
「アスラン……アスラン、アスラン……」
此れが夢ではないと確かめるように、何度も何度も名を呼ぶシンの、やけに掠れた声音が酷く切なく聴こえて。


一瞬、頭の中が真っ白になった。




「…………シン、苦しい」
「え、あ、ごめんなさい!」
「…………」
一体どれだけの間シンに抱き締められていたのだろう。然程長い時間ではなかった筈だ。けれどアスランには相当長く感じられた。
やっと絞り出せた声でシンに苦しいと喋りかけると、それまで無我夢中で抱き締めていたのか、シンは慌ててアスランから離れた。

ごめんなさい、と謝るその顔は、年相応の少年の顔だった。

「……お前」
「え?何?」
漸く離れたシンにアスランが何かを話しかける。だがその声は小さく、シンにははっきりと聞き取れなくて。
「こんな事はもうするなよ」
と、再び言われた言葉の意味を直ぐには理解出来なくて。
「お前だって其れなりに責任ある立場なんだろう?職務を放り投げるような無責任な事はするな」
「アンタ……何言って……」
「こんな急にオーブにまでやってきて……慰霊祭に参加したい気持ちは判るが……」
アスランが次々と発する言葉を、シンは信じられないといった顔で聞いていた。さっきまではアスランに会えた喜びでいっぱいだった表情が、徐々に驚きと悔しさに酷く歪んでいく。
しかし、アスランはそんなシンの表情の変化を、未だ汲み取れていなかった。
「余り周りに迷惑をかけるんじゃないぞ」
と、かつて共に居た頃のように説教をし始める。

その口調は、まるで子供に説教をするかのような語り草。

間違うな、と言う己が間違っているのだと、判らずに。


「……アンタ、まだそんな事言うのかよ……ッ」

すると急にシンが俯き、ガシッとアスランの両肩を掴んで言った。

「まだ判んないって言うのかよ!」
「……ッ、シン?」
「何で俺が此所に来たと思ってるんですか!何回言えば判るんですか!」
「痛……ッ!」

強く肩を掴まれる痛みよりも、シンの気迫に押し切られる。

「何で俺が此所に来たかって?」

その迫力に、何も言えなくなる。

「そんなの決まってんだろ!」

そう叫んで、次の瞬間上げたシンの顔は。


「アンタに会いたいからだよ!」




泣いていた。
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【フェイス】04
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/12/07[ Sun ] 23:20
「アスランっ」
「……え、シ、ン?」

突如現れたシンに、アスランは思わずその場に立ち尽くした。一瞬此れが現実だと忘れる程で、驚きを隠せないまま呆然と少年を見つめていた。
しかし当の本人は、漸くアスランに気付いてもらえたのが嬉しいのか、満面の笑みで手を振り声を掛けてくる。
「シン、お前……」
「良かった、やっと気付いてくれた!」
シンは人混みを掻き分けてアスランに近寄ろうとするも、寸前で警備係達が接近を阻止しようと二人の間に割って入ってきた。カガリ同様、政府要人であるアスランに危害を及ぼすかもしれない、と判断するのは当然だ。遠く離れたプラントの、しかもザフト軍のパイロットであるシンの顔を、オーブ軍でも下級兵士の彼等が知る筈もなくて。
「ちょっ、ちょっと!」
「これより先は駄目です、近付かないで下さい!」
あと少し手を伸ばせばアスランに届くという距離で、呆気なくシンは人混みの中へ押し戻された。だが此処まできて簡単に引き下がる訳もなく、案の定警備係とシンとの押し問答が始まった。
「離せってば!俺、その人の……っ」
「駄目だ!いいから下がれ!」
突然起きた騒動に、周囲の注目が集まる。何事かとざわめく観衆の声を聞き、やっとアスランは冷静さを取り戻して。
「いや、彼は私の知人です。何もありませんから離してもらえませんか?」
と、暴れるシンを取り押さえる警備係に申し出た。不審人物ではないとアスランが事情を説明すると、警備係は納得したのか各々の配置に戻っていった。
「アスランッ、やっと会えた!」
警備係から解放されたシンが、今度こそアスランに駆け寄った。両手を差し出し、アスランに抱きつこうとする。
しかし此処は私室ではない、屋外だ。しかも辺りには多くの人々がいる。公衆の面前で再会の抱擁などもってのほかだ。
その上冷静さを取り戻したとはいえ、まだアスランはシンがオーブに来たのを信じられないでいる。見た目は落ち着いているように見えても、思考はさっきからグルグルと空回り中だ。
「どうして……お前、此処に……?」
そう言いながら、抱きつこうとするシンの肩を押し返すのがやっとだった。
「今日此所で慰霊祭があるとよく判ったな。キラから聞いたのか?」
そして、驚いているのは何もアスランばかりではない。傍で事の次第を見ていたカガリも同じである。だが混乱しきっているアスランより頭はしっかり回っている。カガリは的確に状況を把握し、突然の来訪の理由を混乱しているアスランの代わりに尋ねた。
「此処には俺の家族が居るんです!遺族である俺に連絡がくるのは当然でしょう!」
「ああ、そうか……そうだったな……」
「来賓の手配は実行委員会に任せていたからな。私達が知らないのも無理はない」
「カガリ……」
シンの説明を聞き、納得したカガリがアスランの肩を背後から、ポン、と叩く。
「アスラン」
「何だ?」
「私はもう行くから、お前は戻っていいぞ」
唐突に言い切られ、アスランは思わず振り返った。前のシン、後ろのカガリ、と続けざまに驚かされてばかりだ。
「だが会談が……」
「それは問題ない。会談にはキサカも参加するしな」
「しかし……」
「警護だって大丈夫だ。優秀な部下達が沢山いる」
それでも同行すると食い下がろうとしたアスランの言葉を、カガリがニッコリと笑って遮った。
「命令だ、アスラン」
「……カガリ」
笑顔とは裏腹な威圧的な物言いに、アスランはそれ以上二の句を告げなくなる。
「久し振りに会ったんだろう?ゆっくり過ごしたらいい」
そう言ってカガリは車へと歩き出そうとして。
「最近お前元気なかったからな。ちょうど良かったじゃないか」
と、アスランの耳許で囁いた。途端にアスランの顔がほんのりと赤く染まる。幸か不幸かシンには聞こえていないらしい。不思議そうに二人を見ている。
からかっているのか、ひやかしているのか、どちらにせよアスランを慌てさせるには充分過ぎて。
「カガリ……ッ」
「ん?」
思わず彼女を咎めようとしたが、無邪気に微笑まれてしまっては最早何も言えない。
「いや、何でもない……有り難う、カガリ……」
「気にするな」
感謝を述べるアスランの肩を再び叩くと、カガリは二人をその場に残し車に乗り込んだ。
次第に遠ざかっていく車を見つめながら、アスランは最近の彼女達の反応を思い返す。

道理でしつこく声を掛けてきた訳だ、とこの時漸くアスランはカガリ達の気配りの真意を知った。

だからといって今更どう接すれば良いのか、何をどう説明すればいいのか、アスランには判らない。

元気がないとカガリに心配された、その原因を。

シンの来訪を良かったと言われる、その意味を。


まだ判っていないのだ、アスランは。




「アスラン……?」

不意に声を掛けられる。シンだった。
急に黙ってしまったのを何と捉えたのか、やや不安そうにアスランを見上げていて。

「……ああ、いや。何でもないよ……シン」

兎に角今はコイツの方が最優先だ、と。


アスランは傍らに居る少年の頭をグシャグシャと撫で回した。




止めて下さいよ、と言いながら笑うシンの顔が、アスランの記憶に焼き付いた。
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【フェイス】03
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/11/30[ Sun ] 22:45
シンからのメッセージを見てから数日後、何故か周囲のアスランに対する対応に変化が現れた。
大丈夫か?と聞かれる事が急に増えた。大丈夫だよと答えるのも自然と増えた。何が大丈夫なのだろうか。自分には全く判らない。けれど何度も尋ねられれば、自分でも気付かない何かがあったのかと不安にもなる。
本当に大丈夫なのに、否、本当に大丈夫なのか。

判らないまま、アスランは答えるしかない。

大丈夫だ、と。



遠く離れたシンからのメッセージ。もう限界だと告げられた、恋人からの伝言。
幾ら普段職務を優先しているアスランでも、気にならない訳がない。当然告げた言葉の真意を知りたいと思う。
けれどアスランはシンにコンタクトを取る事はしなかった。正しくはしたくとも出来なかった。アスランの方から連絡を取る僅かな時間すら、過密なスケジュールに忙殺されていたからである。だからといって私情に振り回された挙げ句、職務に差し支えるような真似はしたくない。信頼を寄せてくれているカガリ達に迷惑はかけたくない。
そうやってシンの言葉を頭の隅に追いやり、アスランは任務に没頭していた。


「アスラン、お前本当に大丈夫か?」

今日は戦災で亡くなった人達を弔う慰霊祭があり、その後には慰霊祭の参列で訪問している地球連合の政府高官との会談を控えている。アスランはカガリに付き添い、慰霊祭の会場となった街外れの海岸へと向かっていた。
その車中で又聞かれたのだ、大丈夫か?と。
これで何度目か数えるのも億劫な程繰り返し聞かれた言葉。今アスランに思い当たる節は一つしかなくて。
「ああ、別に何ともないぞちゃんと定期検査は受けているし、検査結果も異常はない」
だから心配しなくていいと、微笑みを浮かべながらアスランは答えた。
アスランがオーブに戻ってきた時、酷い怪我を負っていた。それこそもう助からないのではないかと悲観する程瀕死の状態だった。医師達の懸命な治療のお陰で今でこそ元気に暮らしてはいるものの、多忙なスケジュールをこなすには些かの不安はある。カガリや医師に勧められて今も時折躯の状態を診てもらっていた。
恐らくその事を心配してくれているのだろうと思ったから答えたのだが、しかしカガリは何故かじっとアスランを見つめていた。
「……それならいいが」
そう言ったきり黙ってしまったカガリは、手元にある今日の慰霊祭の予定表に視線を落とした。
俯いた顔に、何故か翳りが滲んでいた。




慰霊祭の会場はアスランにとって思い出のある場所だった。
正しくは、シンとの思い出、のある場所だ。

少年が家族を喪いザフトに入隊するきっかけとなった襲撃。その被害で亡くなった人達を弔う為に建てられた慰霊塔。

過去の悲劇を忘れる間もなく繰り返された戦争。漸く終戦を迎えて直ぐの頃に、シンと再会した場所が此所だった。

そして、二人の関係に変化がおとずれたのも、此所だった。

アンタを嫌いな訳じゃないです、と。共に居た頃は生意気で天の邪鬼だったシンが、初めてアスランへ好意を伝えた場所。
俺もお前の事をずっと気にしていた、と。アスランもシンに告げた場所。

やっと互いに素直な気持ちで語り合えて。そうして和解から信頼へ、信頼から恋情へ。

互いに抱く想いが変化していくきっかけとなった、二人の思い出の場所。


久し振りに其所へ足を踏み入れて、アスランは暫し感慨に耽る。今頃シンはどうしているのかと。
無論そんな私情は一切顔には出さない。亡くなった人達を弔う式典の最中に不謹慎だからだ。
けれど、どうしても意識は記憶に眠るかつてのシンを思い出す。

月面で救助に向かった時に見せた、悔しさと哀しさで泣きそうだったシンの顔。
この慰霊塔で再会した時に見せた、会いづらいと戸惑い躊躇していたシンの顔。
徐々に打ち解け出し、親しくなっていく内に見せてくれた、シンの色々な表情。
告白する緊張の余り睨んでいた顔、想いを受け入れられ喜んでいた顔、多忙な為に逢えなくて淋しがる顔、もう限界だと告げて泣き出した顔。

思い出すどの表情も、鮮明に浮かんでくるのに。

今、この場には、シンは居ない。アスラン独りしか、此処には居ない。


それが少しだけ、淋しかった。




「アスラン?」
「……あ、ああ」
不意に隣に立つカガリに呼ばれ、アスランの意識は記憶から現実へと引き戻される。今何かが判りかけたような気がしたけれど、それ以上物思いに耽る場合ではないと、アスランは私情を排除して式典に集中した。
やがて式典は最後のプログラムを終え、次に控える会談に向かう為カガリを警護しながらアスランは車へと歩き出す。慰霊祭にはアスラン達政府関係者だけでなく、此処に弔われた被災者の遺族達も多く参列していた。沢山の人達でごった返す中を警備係に囲まれながら歩き、二人が乗り込む車まであと少しという至近距離まで近付いた、その時だった。


「アスラン!」


雑踏の中から聞こえた声。
アスランを呼ぶ大きな声。

「アスランッ!」


どんな雑音に紛れても間違う筈などない、アスランになら絶対に聞き分けられる声。


「ああっ、ちょっとすいません、退いて下さい……アスランッ!」


でも、今此処で聴こえる筈など有り得ない声。

「アスランッ、アスランッ!」
「…………え?」


まさか、と思いつつ振り返る。




「シ、ン」


其所には、シンが、居た。
錯覚でも幻覚でもない、確かに現実のシンが。

人だかりに紛れて、アスランの目の前に居た。
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【フェイス】02
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/11/23[ Sun ] 23:57
世界中には戦争で壊滅的な被害を被った街が数多ある。それでもその土地で生きる者達は努力し、復興しようと日々頑張っている。今回アスラン達が視察した街もその一つだった。
今もまだ混乱に乗じた犯罪等が若干あるが、住民達自ら自警団を結成して街を守っていた。カガリはそんな現状を直に確かめ、何が必要か意見を聞く。アスランは、復興を目指す者の中に不穏な輩が居ないか目を光らせる。
そうやってオーブ内外を飛び回る多忙なスケジュールは、アスランから私的な時間を奪っていた。

躯を休める時間も、恋を語り合う時間も、今のアスランには無かった。

それでも、当然だと、思っていた。

視察先からオーブ官邸に戻ると、カガリはまた別の職務に向かった。アスラン以上に多忙な彼女の代わりに、視察の報告書を作成するのもアスランの任務の一つだった。
真っ直ぐ自分の執務室に戻り、早速パソコンを起動させる。
「……ん?」
起動と同時に繋がるよう設定された通信回線。モニターに見慣れたアイコンが表示され、アスランの目は自然とそれに注目した。
「……メール?」
気付けば、一件の新着メッセージ。
誰だ、と思う前に、シンだ、と判る。
差出人を確認するまでもなかった。何故ならばこの回線は軍用ではないアスランのプライベート用で、知るのは極僅かの人間しか居ない。尚且つその回線を通して頻繁にメッセージを送る人間は只一人、シンしか居なかったからだ。
「全く……今度は何の愚痴だ……?」
そんな言葉が勝手に洩れる。溜め息をつきつつメールを開くアスランの顔は、笑っていなかった。
一体いつメッセージを送ってきたのだろうか。つい先程なのか、それとも視察に行く直前か。否、どちらでもいい。視察から戻ったばかりで疲れているのに、そんな時ですらシンの愚痴を聞かねばならないのか、と。正直少し鬱陶しくもあった。
付き合う前は生意気な口ばかり叩いていた。付き合ってからは我が儘を言いまくる。本当に手のかかる子供。そういう印象を、アスランはシンに対し抱いていた。
だから今開こうとしている新着メッセージも、又愚痴や我が儘を一方的に喋っているんだろうと。視察に行く前、無理矢理終わらせた愚痴の続きか何かだろうと。
安直に考えたアスランは、それでも律儀に恋人からのメッセージを再生させた。
『…………』
けれどモニターに映されたのは、やけに神妙な顔付きをしたシン。
『…………』
再生と同時に、重々しい沈黙がモニターから伝わってくる。正しく再生されている筈なのに、シンは口を閉ざしなかなか喋らない。じっとモニターの向こうからアスランを睨むように凝視しているだけだ。
生意気な表情、不貞腐れた態度、いつもと変わらぬ可愛いげのないシンの姿。
しかし、何故だろうか。そんなシンの様子に違和感を覚える。
『…………アンタ』
程なくして、やっとシンが喋り出す。
『今は国が大事って言うけど……』
恋愛よりも世界、それは常々アスランがシンに説いた言葉。
『アンタの言ってる事……間違ってない』
今成すべき事は平和な世界の実現。
『それは俺だってよく判ってる……』
進む道は違えど志は同じ二人。
『戦争を世界から無くしたいって思うのは俺だって同じです』
だから今は離れていても、いつか笑っていられる日の為に、と。
『でも……じゃあ聞くけど』
そう思って、そう願って、頑張ってきた筈だ。
『俺達……全部犠牲にしなきゃ駄目なんですか?』
アスランも、そして、シンも。
『アンタとの時間、犠牲にしなきゃならないの?』
不意にモニターに映る、数時間前のシンの顔が、クシャリと歪む。
『俺はアンタの……何なの?』
それまでずっと睨んでいた少年の生意気な顔が。
『俺……アンタの恋人、なんだよね?』
今にも泣き出してしまいそうな、子供の顔になって。
『会いたいとか話したいとか、思っちゃ駄目なの?』
思わず固唾を飲んで、次の言葉を待つ。
『アンタの事、想っちゃ駄目なんですか?』
過去の映像に、過去の言葉に、過去のシンに。
『アンタさ、本当に俺の事……』
現在のアスランが何かを言える筈もなく。
『好き、なの?』
一方通行の独白に何一つ言ってやれない。
『俺はアンタに会いたい……っ』
とうとう泣き出した少年の泪も拭いてやれない。
『会いたい……アスランに会いたい……』
会いたい、会えない。
『会いたいよぉ……ッ!』
けれど、傍に居ない。
『……俺、もう限界…………』
絞り出すような呟きと同時に、メッセージの再生は終わった。
「…………」
モニターの前で絶句するアスランを独り残したままで。


そこまで追い詰めていたのか。

俺は、お前を。

シン、お前を。



そればかり、頭の中を駆け巡っていた。
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【フェイス】01
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/11/18[ Tue ] 21:49
「アスラン……会いたい……」

悲痛な表情。感情の吐露。

「アンタに会いたい……っ」

シンの、本当の、気持ち。

「会いたいよぉ……っ!」


何も、言えなかった。






多忙を極める、とはまさしく今この現状を言うのだろう。つくづくアスランはそう感じていた。
しかし、モニターに映る相手はアスランの都合などお構い無しに、さっきからずっと一方的に喋りまくっている。
『……でね、酷いんですよアイツ!』
「ああ……」
『人に仕事しろって言っておきながら自分はちゃっかりサボってんですよ!』
「ああ……」
『俺にレポートの提出押し付けておいて、アイツってば』
「ああ……」
シンの言葉に一応相槌はうつものの、アスランの眼はモニター横の時計をチラチラと見ている。
無視をしたら怒る。けれど話をちゃんと聞くつもりもない。何より、そんな時間がない。
何とかこの場を丸く治めようとアスランなりに考えての行動だったが、所詮浅はかな目論見である。
『……ちゃんと話聞いてます?』
と、案の定バレてしまった。
モニターに映るシンを見るふりをして時計を盗み見、生返事ばかり返すアスランの態度に、アスランだけを見て喋っているシンが気付かない訳がないのだ。
バレてしまっては仕方がない。というより寧ろ有り難い。
お陰で言いやすくなった、とアスランが口を開いた。
「シン、すまないが……」
シンの愚痴はどうせいつもの事で、今聞かなくても支障はない。それよりも早く向かわなければ。
「これからカガリに会いに行かなきゃならないんだ」
『アスハの所?』
「ああ、被災地の視察に向かうんだ。もう直ぐ出発だから今お前と話をしている時間がない」
そう言ってアスランが会話という名の愚痴を遮れば、シンは既に膨らませていた頬を更に膨らませ、ジロリとモニター越しに睨んできた。
『久しぶりにアンタと繋がったんですよ!いつコールしてもアンタ居なくって!』
「仕方ないだろう、俺だって任務がある。お前も同じだろう?」
『そうですけど!だから話せる時には話したいじゃないですか!』
シンの言い分も判らなくはない。けれど、時として通じない場合もある。それ位はシンにだってわきまえられるだろうと思っていた。
少しは大人になったと、思っていたのに。考えが甘かっただろうか。
しかし、そんな思慮する余裕すらなくなっていた。それだけ時間は切羽詰まっているのだ。
「シン、これ以上は無理だ……本当に時間がない」
『後五分、……駄目ですか?』
「我が儘言うな……」
後少しと食い下がるシンに、アスランは非情にもタイムリミットを告げる。
その言葉に、シンが黙る。
『…………判りました』
暫しの沈黙の後、シンはそう言って通話を切った。一瞬でブラックアウトするモニター。通話が切れる寸前見せたシンの顔が、アスランの網膜に残像として浮かぶ。
「…………」
通話を強制終了させた瞬間のシンの表情は、酷いものだった。

時間がないと全く相手をしてくれない薄情な恋人を、まるで恨んでいるかのような、そんな顔をしていた。



アスランとシンは、戦後離れ離れで暮らしていた。シンはそのままザフトに残り、アスランは流浪の末にオーブで生きている。
戻ろうと思えば、ザフトに復隊出来た。アスランが脱走したという記録は、戦中のどさくさか若しくは何かの謀略か、幸い公式には残っていなかった。それに現在プラントを束ねているのはかつての婚約者ラクスだ。今は違うとはいえ、彼女ならばアスランを己の膝元へ呼び戻すのは容易い事だったろう。
しかしアスランはオーブに残ると決めた。ラクスも止めなかった。代わりにキラを連れて彼女は争いなき平和な世界を成す為、政治の表舞台に上がったのだ。
唯一アスランの決意を認めようとしなかったのが、シンだった。
アンタ何で戻ってこないんですか!と泣き喚かれてしまった。もしかして俺のせいですか?と落ち込ませてしまった。
そうじゃない、と宥めるのに酷く苦労したのはもう随分前の事なのに、今でも鮮明に思い出せる程シンは当時荒れに荒れた。

否、荒れて当然だろう。

これをきっかけに二人は付き合い始めたのだから。

以前からそれらしい感情は互いに抱いていた。ただ自覚する前に戦争で引き裂かれた格好になっていたのだ。全て終わって、さあこれからという時にアスランはシンよりもオーブを選択したのだ。

『お前の事は好きだ。しかし今は国を、世界を助けたい』

行き場をなくした俺を救ってくれたオーブを、お前が憎しみ慈しんだ故郷であるオーブを、守りたい。

そう語るアスランにシンは頷くしかなかった。

『遠く離れても、想いは変わらないから』

その言葉はシンにも通じていると、思っていた。





フウ、と知らず知らず溜め息が洩れる。シンとの通話を終える度にアスランはいつも溜め息をついている。
シンの愚痴は大抵がキラの事だ。
艦長を亡くしたミネルバに、新しく艦長として配属されたキラ。イザーク率いるジュール隊とキラ率いるヤマト隊は、ラクスを加護する大事な部隊だ。シンはキラの部下として数々の任務をこなし内外に実力を認められてきている。その名声はオーブに居るアスランの元にも届く程だった。
アスランはといえば、オーブ軍に所属しカガリの補佐として日々各地を回っている。首相を護衛する傍ら、各地の軍事力を監視する役目を担っていた。ザフトとオーブ、両軍の機密を知るアスランだからこそ見極められる、とカガリに信頼されての任命だった。オーブだけでなく、地球軍側の施設や被災地等を視察して回る為、留守にしている事が多かった。

シンは宇宙を、アスランは地球を、各々駆け回る毎日。

当然簡単には会える訳もなく、モニター越しに話せる時間も限られていて。

けれど仕方ないと。今はそうするしかないと。



アスランはそう思っていた。

シンも同じだと思っていた。
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【春の宵、君の隣で。】
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/04/13[ Sun ] 16:01
全く変な時間に眼が覚めてしまったな、と。時計を見るより先に窓の向こうの空の色がアスランに時刻を教えてくれていた。
ベッド脇にある窓から見上げた、夜明けの空にポカリと浮かぶ白い月。半球に遠ざかった太陽光を浴び闇夜の空で金色に輝いていた月は、今また自転により近付いてきた太陽によって明けた空では白く浮かび上がるしかなくて。こんな時に地球は回っているんだな、と宇宙育ちのアスランは実感するのだけれど、でも今はそれよりも早朝に起きてしまった事の方が正直気掛かりだった。
まだ起きるには早い、しかし今から寝直すのも躊躇われる。それでなくとも最近はやけに目覚めが早くて、まだ大丈夫と寝直したせいでシンに起こされているのだ。アンタ何時まで寝てんの!と何度寝惚け頭で聴かされた事か。
そのシンはアスランの隣ですぅすぅと寝息をたてている。起きている時は大概不貞腐れた面構えばかりで喧しい癖に、寝ている時は穏やかな顔をしていて年相応に可愛らしい。
…………年下のガキを可愛いと思う事自体、間違っている気がしなくもないが。
それでも、この生意気な子供に惚れてしまっているのは、間違いなくアスランなのだから。
「あー……」
取り敢えず今はこの無駄な時間をどう過ごすべきか、そちらの方が重要だ。寝ているシンを起こさないように腕をあげて、アスランは自分の頭をガリガリと掻いた。
どうせ起きなくてはならないのだし、そういえばまとめなければならないデータがあったな、と。提出にはまだ余裕があるけれど、今の内にやってしまおうか。
そう考えてアスランはゆっくりと身を起こした。幸いアスランは寝相の悪いシンを壁際にして寝ていたから、ベッドから抜け出すのは容易い。それでもシンを起こさないようにと慎重に行動したのだけれど。

「……ん、アスラン、さん…?」

しまった、起こしたか。

アスランは慌てて隣のシンを覗き見て。

「…………」
「どうしたの…?」

そう尋ねられるまで、アスランはシンに見惚れていたのに気付かなかった。

「あ、いや…。起こしてすまなかった」
時間にして、ほんの僅かなものだ。決してしげしげと凝視していた訳じゃないし、長い間見つめていた訳でもない。それでも短い時間であっても見惚れてしまった事実は変わらない。今更取り繕ったって無意味だし、第一肝心のシンは寝惚けていて気付いてない。
「もう朝ですか…?」
「いや、まだ早い。もう少し寝てていいぞ」
眠い目をごしごし擦りながら聞いてくるシンは、確か午前中大事な会議があって一分たりとも遅れられないと言っていた。只でさえ最近は政府高官の護衛だの、特殊任務の訓練だので帰宅が遅いから、睡眠時間はとても貴重だ。

だからここの所ずっと御無沙汰で、無理をしてしたがるシンを宥めるなり殴るなりして早く寝かせていたのだけれど。

うっかり見惚れるなんて、俺もヤバいのだろうか。

…………いや、それは今は関係ない。

「アスランさんは…?寝ないの…?」
「俺は……」
やる事があるから、と言おうとしたのに、最後まで言えなかった。シンがアスランのパジャマの裾を掴んで引き留めたから。

「なら…まだ寝てようよ……アスラン」

と吐息混じりに呟いたシンの言葉に、う、とアスランは喉を詰まらせる。

この野郎、無意識か!

普段は呼ばなくなった、呼び捨てする呼び方を夢うつつで囁かれたら、幾ら生真面目なアスランとて後ろ髪を引かれる気持ちになる。それでなくとも最近御無沙汰なせいで、アスラン、と呼ばれていないのだ。恋人らしい時間が不足していて、じわじわと堪らない気分になってしまう。

「ねえ…アスラン…?」

また呼ばれて、これ以上は拒めない。

………拒むつもりはなかったけれど。ただちょっと躊躇っただけだけれど。

「仕方ないな…」
「えへへ…」
一度は抜け出したベッドへと戻れば、早速シンが抱きついてきた。ぎゅう、と両手いっぱいにアスランを抱き締めて、そうして寄せた頭部を肩に押し付けて。髪に頬擦りしながらシンはまた静かになった。
寝るには少し苦しい体勢だけれど、シンが嬉しそうだから良いか、と。アスランはされるがままシンの腕の中で瞼を閉じる。

まだまだ子供だと思っているのに、それでもたまに見せる表情にドキリとする。
出逢った頃より幾つか歳を重ねたせいだろうか。精悍になった顔付き、逞しくなった身体に、シンが大人の男になりつつあるのを感じる。さっきみたいについ見つめてしまう事も、たまにある。半分寝惚けている癖に、やけに違って見えて。
ああ、いいな、コイツのこのカオ。
認めたくはないけれど、鼓動が高鳴る。
それもこれも、惚れているからだと。判ってはいるけれど、認めたくはない。認めたらきっと、いや絶対に調子に乗るだろう。アスランだって男だ。まだまだ歳上ぶりたいのだ。
不意にアスランがシンの腕から若干身をずりあげて、今度は逆にシンの頭を掻き抱く。そうして、ふふ、と小さく笑って。

やっぱりこっちの方がいいな、まだ。

内心呟きながら黒髪にそっと口付けた。



窓の外は夜明けの藍から次第に明るい光に染まり、爽やかな晴天の蒼空に変わりつつある。
何をするでもなく、ただ穏やかな無駄な時間を過ごすのも悪くはない、かもしれない。

まだ短い人生で唯一惚れた男を、アスランは腕に抱き締めながら。



ささやかな幸せを温かく感じて、再び瞼を閉じた。
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【今、叶うのなら】
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/03/21[ Fri ] 00:03
日記で言っていた短編です。すげー短いです。つかポエムです。何がしたいのか判らないダークなポエムでしかありません。
ぶっちゃけ思い付きで書いております。

そしてアスラン脱走時のネタなので、少々痛い表現があります。

それを踏まえた上で、痛々しいポエムが好物という方はご覧下さいwww

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【ハッピィサプライズ】
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/02/17[ Sun ] 21:49
「…………」

偶々目についた其れを、アスランは足を止めて凝視していた。時間にしてほんの僅かな間だったが、その瞬間に色々と思考を巡らせる。

あれ、いいかもしれないな。色が良い。形は…何れも似たように思えるけれど。でも飾りにつけられた、あの色が良い。

赤い飾りが、アイツの目みたいだ。


そうして、気づけばアスランは声を掛けていた。
女性客でごった返す売り場で、ニコニコと接客を続ける同じく女性の店員に。

「すいません、これをひとつ下さい」







瞬時にそれが何か理解出来る程、シンに余裕はなかった。というより差し出された瞬間ぶっ飛んだ。

「え、これ、何、ちょっと、え、え、え」
「落ち着けシン。何を言っているか全然判らないぞ」
差し出された物を受け取ったはいいが動揺はこれっぽっちも治まらない。とんでもなく慌てふためくシンとは正反対に、アスランは暢気で尊大な口調である。
目の前でやけに落ち着きはらった態度で、尚且つ頭をポフポフと撫でる年上のアスランに、無性に腹が立つ。
「落ち着けって、落ち着ける訳ないじゃないですかーーッ!」
「だからって叫ぶな怒鳴るな切れるな馬鹿野郎!」
キレたらキレ返された。しかも毎度の如く拳骨のオマケ付きで。
ジンジン痛む頭のてっぺんをさすりながら、シンは改めてアスランに聞いた。
「これ、お土産って、どう見てもバレンタインのチョコじゃないですか!」
「ああ、そうだが」
「何で今更!今日何日だと思ってるんですか!」
また怒鳴って再びアスランに殴られる前に、シンはポツリと小声で呟いた。

「…いいの?バレンタインって…アンタ……」

そう言って恐る恐る見上げたアスランは、笑っていた。

「いいんだ、シン」

と、笑って、そうして。

「お前にあげたかったんだ」


そっとシンを抱き寄せた。




アスランは昨日、今日と二日間プラントに行っていた。正確にはプラントのテリトリー内に在る、空虚な宇宙空間に。スペースデブリしか浮かばぬ闇の中に。

バレンタインデー。
地球に住む者にとっては愛を伝える恋人達の甘い行事。
血のバレンタイン。
プラントに住む者にとっては悲哀と悔恨が今尚色濃い悲しき記念日。

戦後オーブで暮らす二人だったが、その日だけは遠く離ればなれだ。シンは地球で向かえるけれど、アスランはいつも宇宙に上がる。恋人を置いていくアスランにシンは文句も言わないし、言う権利もない。
アスランにとって、バレンタインは母の命日なのだから。無念に散った母の魂を弔う為に、想い出の中の母に逢う為に。アスランは平和を迎えた今、欠かさずに慰霊祭に参列する。
一緒に居て下さいと言えない。一緒に行きますとも言えやしない。母を戦争の犠牲で失い、父を戦犯として失い、自らも罪を重ねてきた呵責に今も苛むアスランの心情を思えば、同じく肉親を失ったシンには何も告げられない。

勿論チョコを下さいとも言える筈もない。

だからいつもシンはホワイトデイにアスランへプレゼントを上げていたのだ。バレンタインの分も合わせて。
こういったイベントごとに無頓着なアスランも最初は忘れがちだったが、シンが騒いだせいか今ではしっかり覚えていて。毎年二人でプレゼントの交換をして、甘い夜を過ごしていたのだけれど。

まさか、貰えると思わなかった。
アスランから、バレンタインチョコを。


一日遅れではあるけれど。


「式典が終わって、イザーク達に付き合ってもらって買い物に出掛けたんだ。お前に土産でも、と思ってな」
「はあ…」
「立ち寄った店はちょうどバレンタインで賑わっていてな。店内を見て回っていた時にそれを見つけたんだ」
「はあ…」
「って、お前何だか嬉しくなさそうだな」
チョコを購入した時の状況を伝えるアスランに、シンは何とも曖昧な返事を返すばかりで。つまらなさそうに映る態度をアスランが追及すると、シンはまた声を大にして言った。

「嬉し過ぎてビックリしてるんです!」

シンの絶叫はアスランの耳に痛い程伝わった。それもその筈、二人抱き合ったまま、ぴったりと密着した状態で話しているのだ。聞こえ過ぎな位である。
「俺…何も用意してませんよ…」
「いいさ。ホワイトデーを楽しみにしているよ」
こんな事ならチョコを買っておけば良かったと悄気るシンに、アスランは軽くキスをして囁いた。
「それよりチョコ食べないのか?」
そう言いながらシンの唇から首筋へとキスを繰り返すアスランは、まるで誘っているようで。これで意識してないんだから末恐ろしい。
「勿体ないから今は食べません!それより先にアンタを食べたいです!」
まだまだ若いシンにはアスランの無自覚な誘惑に勝てる訳がない。だから勢いよくアスランをその場に押し倒した。
「ちょ、ちょっと待て!」
「待てません!」
「今か、今なのか!」
「そうです!今、此処で!」
又も逆キレるシンに、アスランの鉄拳が飛ぶかと思いきや。
「仕方ないな」
と、拳を飛ばす代わりに強く抱き締められた。





一日遅れのバレンタインと、一日遅れの恋人同士の甘い夜。
事に及んで、全て終わって。疲れて眠ったシンの幼い寝顔をしみじみ眺めながら、アスランがポソリと呟いた。

「俺は勿体なくないのか、お前」




シンの横には、さっきアスランがあげたチョコレートが置かれていた。
勿体ないからと開けるのすら後回しにされて、先にアスランの甘い躯を食べられて。

それでもアスランがシンの為に選んで買ってきたチョコレートだ。食べられるのを今か今かと待ちわびているだろうから。

早く起きろ、シン。起きたらそれを食べてくれ。俺の見ている前で、食べてくれ。


悪態をついたばかりの唇で、アスランはすやすやと眠るシンの瞼にキスをした。
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拍手お礼・お正月バージョン公開
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2008/01/01[ Tue ] 01:08
拍手お礼SSお正月バージョンを更新しました。毎年恒例となったオミクジ式でございますw
今年も頑張って5パターンありますが、やはりお約束、ランダムとなっております。
一発目に出た結果で運試しするも良し、全部出るまで何回かかったか試すも良し、お好きなようにお楽しみ下さい。つか密かに皆さんの結果報告が私は楽しかったりしますよwww

取り敢えず一月中旬位までは公開していこうかと思いますので閲覧はお早めにー。
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【ほんとうのこと】
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2007/10/11[ Thu ] 23:20
「ほらシン、コレだコレ!」


そう云ってある物を指さし、はしゃいでいるアスランさんは可愛い。
可愛い、可愛い………んだけど。

「アスランさん」
「前に俺が云っていたヤツだ」
「アスランさん」
「凄く旨かったんだぞコレ」
「アスランさん」
「シン、お前も一緒に食べよう!」
「アスランさんっ!」


頼む、誰かこの暴走ボケを止めてくれ!


俺が何回呼んでも全く聞いちゃいない。凄え満面の笑みできゃあきゃあ騒いで、俺の服の裾引っ張って息つく間もなく喋り続けてる。
堪らなくなった俺が声を荒げたら漸くちょっとは冷静になったみたいだ。けど俺の反応が不服らしく、口をへの字口にしてじっとりと俺を見てる。
ああ、はいはい。心配しなくてもちゃんと食べますよ、食べに行けばいいんでしょ。
別に俺は嫌いじゃないからそれ自体は問題じゃないんだ。

問題なのは………………此所がショッピングセンターのど真ん中、休日の昼下がりの込み合うファーストフードの店先だっていう事で。

タッパのある男がそれより………………ちょっと小柄な男をひっ捕まえてきゃあきゃあ騒いでるってのが、もう。


「ほらっ、さっさと入りますよ!」
「あ、うん。シン」
あんまりアスランさんが騒ぐもんだから、周りの人達の視線が痛い。流石に恥ずかしくなって俺はアスランさんの腕を掴むと引きずるように店内に入った。でも当の本人は何で周りに見られているのか、いやそれ以前に見られている事すらよく判ってないらしくて、キョトンとしながら俺に引きずられてる。

ああ、もうホントこの人に羞恥心ってものはないのかな。あの時以外で。


「いらっしゃいませ、店内でお召し上がりですか?」
「はい。えーっと、コレを二つ単品で」
「ありがとうございます」
昼時の混雑した店内は座る場所が余りない。アスランさんに場所を確保しておけと先に行かせて、俺はレジでご希望の品を注文する。
そんなにコレが食いたいかな。甘い照り焼きソースがかかったビーフパテと丸く焼いた目玉焼きが挟まったハンバーガー。別に嫌いじゃないけど、あんな風にはしゃぐ程じゃないと思うんだけど。
…ああ、でもあの人こういう店余り来た事なさそう。
そう考えながら注文したハンバーガーが載ったトレイを持ってアスランさんが見つけた席まで向かった。
「はいコレ」
「ありがとう、シン」
紙包みにくるまったハンバーガーを手渡せば、笑顔で感謝された。受けとるやいなや直ぐにアスランさんは紙包みを剥いてかぶりついて。
恥ずかしかったりしたけど、喜んでるからいいかな、とも思う。嬉しそうなアスランさんを目の保養にしながら俺も食べようかとガサガサと紙を剥がし始めたら。
「………?」
「どうしました、アスランさん?」
一口だけかぶりついた途端、急に固まってしまったアスランさんの様子にちょっと驚いた。あれだけ店先で食べたいと騒いでいたのに、何だろうこの反応は。
そんな俺の疑問は口の中のハンバーガーを祖酌し終えたアスランさん本人が直ぐに教えてくれた。
「………シン、これは本当に俺が言っていたやつか?」
「ええ、そうですよ。アンタがさっき指さしてたヤツ買ってきたんですけど?」
「何だか前に食べたのと違う気がするんだが…」
正直そんな事言われても困る。俺は言われた通りに間違いなく買ってきたんだし、アンタこそ間違えてんじゃないの?と口にしようとしたら。


「これ、エビが入っていない…」


と耳を疑う発言が飛び出した。

「はぁ?エビぃ?」
「ああ。エビだ」
「何でエビ!」

アンタ絶対勘違いしてる!と当然俺は思ったのだが、アスランさんは更にとんでもない事を言い始める。
「前に食べたのは中にエビが入っていて、そのエビが凄くプリプリしててうまかったんだ。だからシン、お前と一緒に来てまた食べたいと思ったんだ」
はあ…。いや、俺と一緒にってのは嬉しいんですけどね。でも先ず肝心な所が激しく間違ってる。
「アンタさ、自分が何を食べてるか判ってます?」
「当然だろう!照り焼き目玉ハンバーガーだ」
俺の問いにアスランさんはさも当たり前だと憤慨しながら答えたけれど、俺の中には既にもう違う答えがある訳で。

「じゃあ聞きますけどね、前に食べた時照り焼きソースの味しました?目玉焼き入ってました?」

「………………………」


沈黙したよ、この人!


どうやら俺に指摘されて初めて気付いたらしく、ハンバーガー片手に固まってしまった。

「じゃあ…俺が前に食べたのは…?」
「アンタが食べたのはエビバーガーです」

酷くショックな顔をしているから悪いかなとも思ったけれど、正しい答えは教えておかねば、と俺は座席から見える店内の壁にあるメニュー一覧を指さした。
「そんな…だって俺確かに照り焼き目玉ハンバーガーを指さして注文したんだぞ…」
看板メニューを振り返り見ながらアスランさんがまるでうわごとのようにブツブツと呟いている。
「恐らく店員が間違って出しちゃったんでしょうね。でも普通気付くし、味も食感も全然違うんだから」
俺がさっき浮かんだ答え、つか真実?を喋ってもどうやら耳には入っていないらしい。まだぐちぐち言ってて、ちょっとウザイ。
「いいからさっさと食べましょうよ。まだ買い物終わってないんだから!」
そうなのだ、今日此所に来たのは日用品やら何やらを買いに来たんであって。なのによく判らない工具やら螺子やら買うのに付き合わされて、まだ全然目的の日用品は買えてないんだから。
此処でゆっくりしてる時間がもったいないと急かす俺の目の前では、まだアスランさんが愚痴を垂れ流しながら間違って買った(アスランさん的には)ハンバーガーを渋々食べていた。





エビごときですっかりしょげてるアスランさんがやっぱり可愛いから、今夜はエビを山盛り食べさせてやろう、とちょっとだけ思った。
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【柩】2 -碧の空-
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2007/07/21[ Sat ] 22:28
「気付け、シン!」

彼が、叫んだ。

「戦争を終わらせる為に戦う、それは新たな争いをしているに過ぎない。本当に戦争を終わらせたいなら出来る事はひとつ、武器を持たない事だ!」

今更そんな正論を云ってほしくなかった。もう既に手にしているのに。銃を、剣を、………操縦悍を。

もう、沢山人を、殺してしまったのに。


そして、彼は沈む。赤い閃光と共に爆発に飲まれ、黒い水しぶきを上げて、夜の海に。
シンに撃たれて、アスランは沈む。
シンの心に言葉の弾を撃ち、記憶の刄を刺し、アスランはどす黒い暗闇の海底へと、沈む。



あんなに碧かった海は、赤く血に染まって見えた。







「…此所に居たんですか」
探していた人物を漸く見つけ、シンは彼の人に意を決して声を掛けた。
正直まだ戸惑いはある。どう接していいのか、それよりも彼に会っていいのかすら、混乱から抜け出せないでいるシンには全く判らない。
でも彼を探して、そうして話をしたかった。
だからシンは今此所に来た。慣れぬ艦内を迷い歩き、やっと辿り着いた、アスランが居る格納庫まで。
「ああ、シンか」
声を掛けられたアスランはそれまで見上げていた物から眼を反らし、シンがよく知る辛そうな微笑みを浮かべながら振り返った。
アスランが見ていた物は、つい先程まで操縦席に乗り込み、暗い宇宙の海を自在に游いだ機体である。先の大戦で戦い抜いた自機を更に強化した、今のアスランの機体。
一時停戦を迎え束の間の時間を休息に当てがわずに、彼は大切な機体の破損状況を手元の整備ログと照らし合わせながら目視で確かめていたらしい。誰よりも慎重で機体整備を重視する彼らしい行動だと思った。
「治療は済んだのか?」
「………はい」
格納庫の入り口に立ち止まったままのシンへと歩み寄り、月面墜落時に負った怪我の事を気遣ってくれて。
そう遠くはない過去、同じ戦艦に所属し共に戦ってきた。アスランにとってはえらく手のかかる部下だった。けれど信念の違いや様々な思惑に囚われた為に、刄を交える敵となってしまった。
なのに彼は今でも変わらずに接してくれて。
「どうだ、怪我は痛むか?」
「…いえ、皮膚を切っただけなんで」
「そうか。だが墜落の衝撃で打撲もあるだろう。余り無理はするなよ?」
「………はい」
アスランが気遣うシンの怪我は、彼が負わせた傷でもある。最期と決めた総力戦、持てるだけの力を出して戦い抜いた戦争。その最中で偶然か故意か、シンはアスランと直接対峙し、そうして彼に敗れた。

振るうべき力を見極めろ、力の意味を知り尽せ。

激しさを増す戦闘中にもアスランはシンに叫び続けていた。
そういえば昔にも彼に云われた、ある言葉があったのを不意に思い出す。

シン、俺達の機体は、俺達の亡骸を納める柩なんだ。
結局あの時、シンは静かに語るアスランの言葉に何も言えずに。アスランも又笑う訳でもなく怒る訳でもなく、ただ静かにシンを翠の眼に映し。
沈黙のまま甲板から彼が立ち去っていくのを呆然と見ているだけだった。

けれど今は違う。

シンが亡骸となって柩に入る代わりに、アスランを亡骸にして柩に納めようとしたのだから。

間違いなくシンにしか聞けないだろう、答え。それを聞く権利も、覚悟も、今のシンには確かにあった。

皮肉にも過ちを犯して漸くシンは、彼の人の言葉を理解したのだった。真理を得るには余りにも辛過ぎる代償ではあったけれど。

「………前に、アンタ云いましたよね?」
「ん?」
突然の問掛けにアスランがさも不思議そうな顔でシンを見返している。何と無く、怖くなって、でも。
「あれ、を………柩、だって」
と、シンは怯まずに言い切った。側に在る巨大な赤い悪魔を指差して、柩、と尋ねたのだ。暫し指先の向こうを見上げ、やがてアスランが、ああ、と頷いた。
「云ったな、そういえば。しかし何故今頃…?」
「俺、何故かそれがずっと引っ掛かってて………」
「そうか」
アスランからすれば突然過ぎる質問だ。だが振り向いた先に酷く困惑した表情のシンを見て、短く答えただけだった。

「棺になり損ねたけどな」
苦笑しながらアスランが云うと、シンが傷付いたように彼を睨む。
「………んな言い方、止めて下さい」
「………………すまない」
口下手なアスランにはやはり冗談は巧く言えない。お陰でシンが今も負ったままの疵をえぐる結果となり、少年が一瞬絶句したのに気付いてやっと彼を傷付けてしまったと悟った。
うつ向きがちに拳を握る少年が、痛々しくて、可哀想で、………憎たらしいのに、可愛くて。

やっとか、とアスランは感慨に浸る。

「だが…ならずに済んで良かったよ」
「え…?」

ぽん、と不意にアスランがシンの頭を軽く叩いて。顔を上げろ、という仕草に見上げれば。

「本当に良かった」

そう云って、アスランは笑う。いつもの困った顔じゃなく、本当の笑顔で、シンに笑う。

にこやかな、心からの笑顔を浮かべて尚アスランは淡々と語る。


「あれは棺だよ」

棺に入らないで、良かった。

「棺、になる筈だった」

死ななくて、良かった。

「今はならずに済んで良かったと心から思う」

今、生きていて、良かった。

「お前が、此処に居るからな」

アスランの隣に、居るから。


シンもアスランも、生きて今此所に居る。

だから、本当に良かった。

翠の眼が、告げていた。その言葉の意味を考え、直ぐに悟る。
彼は判っていてくれた。あの時彼が発言した言葉がシンを捕え悩ませていた事を。よく知る人物を討たねばならなかった葛藤、生き続ける限り戦わねばならない苦悩。
そして、柩、という言葉に秘められたアスランの想いに漸くシンが気付いた事も、その為に今シンが後悔している事にも。
アスランは理解してくれていて、だから笑ってくれたのだ。

もういいよ、お前はちゃんと判ってくれたから、と。



「ア、ス、ラン…ッ!」

急に目頭が熱くなり、気付けばシンは号泣していた。
みっともないと思う、こんな無様な姿を彼に晒して。

でも泪が止まらない。

泣きたくて泣きたくて、今はそうするしか。

「シン、泣くんじゃない」
「だっ、て…でも…!」
「判ってる。大丈夫だから、シン…大丈夫だ」

何が、だって、なのか。
何が、だから、なのか。
互いの言葉の意味は、互いにしか判らない。

けれど、そう。
もう、大丈夫。

彼は、確かに生きていて。シンの前に居てくれて。
そうして笑ってくれて。

その顔は逝く者の顔ではなかった。希望に満ちた、生きる者の顔をしていた。
シンと共に、生きのびた人達と共に、この世界を生きる、と。

そう心に誓った顔をしていた。



シン、俺達の機体は、俺達の亡骸を納める柩なんだ。

いつか見た蒼い空と碧い海。
いつか見た黒い空と赤い海。

そしていつか見た、そう告げた時の哀しげな彼の姿。

ずっと囚われてきたものからやっと今昇華されたような気がして。

過去を背負う苦しみ、現在を償う辛さ、そして未来を生きる喜び。

それらをひしひしと感じて。



シンはただ泣いていた。
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【柩】1 -赤い海-
TB[ - ]  CM[ - ]  Edit   2007/05/10[ Thu ] 21:42
天と地が引っくり返った、ように見えた。



天は空、地は海、どちらも同じ青だったけれど。
空の蒼を映した海の碧だから天地が逆でも大して違和感はなかった。それよりも別の物に集中していたから、今自分が天に昇っているのか、地に墜ちているのか、気にする余裕などなかった。


天よりも地よりも、あの機体を。

敵、を。

倒すんだ、俺は。



それしか、シンは考えていなかった。




だから母艦であるミネルバに帰還した時、シンはまた憂鬱な面をした上司に小言を云われてしまった。出撃する度繰り返すシンの危険な独断による行動、その後帰還した母艦で決まって繰り返されるアスランの常識に固められた注意。
自分は正しい、間違っていない、と信念に従ったシンからすればアスランの言葉はうざったいだけで。当然これ以上ない程の不遜な態度で上司の小言を聞かされ羽目になる。アスランもまた普段から景気の悪そうな面構えが更に悪化し、怒っているのか嘆いているのか判別つかぬ態度で部下を叱る。

無論互いに良い印象は、抱いていない。
煩い上司、生意気な部下、そんな関係だった。

「どうしてお前はいつもそうなんだ」
「…何が、でありますか?」
「判っている癖に知らない振りをするな、シン。戦闘を軽く考えるのは止めろ。お前一人だけが相手と向き合っている訳ではないんだぞ?」
「俺がいつ戦争を軽く考えてたって云うんですか!」
「では何故命令を聞かない?。我先に突進するだけが戦いじゃない。仲間と連携をとって慎重に動かなければいけないんだ」
考えもなしに特攻するな。先を読まずに行動するな。周りを視ずに仕掛けるな。毎度のお約束となった台詞をアスランは真剣な面持ちで告げた。シンも負けずに言い返すが、頭に血が昇ったシンに理論で固めたアスランの発言をそう簡単には崩せなくて。
自機から降下したばかりの格納庫で、戦いの余韻を残すパイロットスーツを纏ったままで、暫し二人は言い争った。周囲には当然仲間達が大勢居たが、皆いつもの事だと遠回しに見守るだけだった。
「いいか、俺達は無駄な争いを止める為に此所に居るんだ。新たな火種を巻き散らす為に居る訳ではない」
「判ってますよ、そんな事!」
いつもいつも云われ続けて暗記してしまう程シンは出撃する度に叱られてばかりだ。それでも今日は頬を叩かれなかったし、胸ぐらを掴まれたりしなかった。只、酷く悲しそうな冷たい顔をされて。
「お前は何をそんなに急いでいるんだ?」
と、意味の判らない事を唐突に聞かれた。
何だよそれ、と反論を口にする前に、その上司は溜め息を洩らすとあっという間にシンから離れて何処かへ行ってしまった。

残されたシンの胸に、アスランから一方的に投げ掛けられた言葉がくすぶり続けて。打ち消そうにも、なかなか消えてはくれなかった。




それでなくとも戦闘で高ぶった神経が沈静化していない。加えてアスランからの楔のような言葉が思考を支配しそうで。シンは苛々する自分を持て余して、パイロットスーツから着慣れた赤の軍服に着替えた後、その脚で甲板へと向かった。
いつも苛ついたり落ち着かない時、決まって訪れるシンの安息の場所。何故だろうか甲板で潮風に吹かれていると何処か郷愁にも似た気分に浸り、いつしか落ち着きを取り戻す事が出来た。
だから今日も安らぎを欲してシンは甲板へと向かったのだけれど。


夕焼けに照らされた赤い海、肌寒く感じる潮風に吹かれて、彼の人はシンより先に其処に居た。

「…ッ」
「ああ、シン」
「………アスラン、さん」
其処に居たのは、アスラン、だった。
甲板の手摺に捕まりながら肩まで伸びた藍色の髪を潮風にたなびかせ、彼は赤味を増して沈もうとする太陽に向かって佇んでいた。
シンに呼ばれ振り向いたその姿は太陽の赤を溶かしたかの如く、鮮やかな緋に染まって見えた。
「シン、さっき俺が言った事だが…」
「何ですか、また説教ですか」
荒ぶる気を鎮めようと甲板に来たのに、再び始まった説教がシンには堪らなく鬱陶しくて。あからさまに不機嫌な顔をし立ち去ろうとした背中に、アスランが淡々と語りだした。
「確かにインパルスはお前にとって大事な機体だ。戦場ではお前の代わりに手足となってくれる」
説教かと思いきや淡々と語られ出した独白のような言葉。予想していなかった様子にシンは思わず振り返ってしまったが、肩越しに見たアスランは既に視界にシンを留めてはおらず、海原に消え行く赤い太陽を翠の眸に映していて。
「敵を撃つ武器でもあるし、お前の身を守る盾でもある」
それでも彼の告白は尚静かに続く。何気無く掴んでいた甲板の手摺を、ぎゅ、と一瞬だけ強く握って。
「だがな…シン」
何かを迷い言い淀むかのようにアスランは一度口を閉ざし、そうして覚悟を決めた唇はまた言葉をつむいだ。


「お前の、棺、でもあるんだ」



棺、と確かに云った。


耳を疑うまでもなく確かに、柩、と。アスランはシンにはっきりとその言葉を告げたのだった。

シンが自分の手足のように扱う機体は、剣であり盾であると同時に、シンの亡骸を納める、柩、であると。

あれはお前の、柩、なのだと。






あの時アスランは、シンにそう云っていた。

そんな馬鹿な、と直ぐに否定したかった。何故今そんな事を言い出すのか、と。

アンタあの時どんなつもりで云ったんですか。

剣であり盾であり、けれど、棺である、と。

俺に一体どんなつもりで。


アスランの云った言葉の意味を、柩だと告げた彼の真意を、確かめたいと願った時。

もう彼は居なかった。
否、居なくなってしまった。


シンが討ってしまったから。
シンが棺にしてしまったから。

アスランの乗る機体をシンが自らその手で柩にしてしまったから。

シンが亡骸になる代わりにアスランが亡骸となってしまったから。



あの時見た光景。

蒼い海を染め変える程赤々と燃え盛る焔のような太陽と、負けぬ位赤に染まった軍服を纏ったアスランの姿。

今でも忘れられない程。



シンの心に鮮明に焼き付いていた。
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